経済・社会構造分析レポート
成長戦略の成果はなぜ見えないのか

構造的改善を狙った施策の進捗管理とKPIの体系的評価が必要

2016年3月16日

  • パブリック・ポリシー・チーム エコノミスト 神田 慶司

サマリー

◆安倍内閣の成長戦略を評価する上で重要な136個の成果目標(KPI)のうち、政府は59個が目標達成に向けて進捗していると評価している。これは評価可能な86個のKPIの約7割にあたるが、それほど改革が進展しているイメージは持ちにくい。

◆進捗していると評価されたKPIの中には、単なる景気循環要因による成果とみられるものもあり、制度・規制改革による改善とは評価できないものが含まれている。進展が見られたKPIについても、新規的で構造的な成果が得られた段階にはまだないものが少なくない。構造的改善を伴ってKPIが進捗していくか、引き続き注視する必要がある。

◆成長戦略の進捗管理を担う産業競争力会議の資料には、成長戦略を3年間行っても潜在成長率が低迷したままである理由に関する分析や検討結果は見当たらない。KPIごとにその性質や達成の難易度が異なるが、体系的な評価はなされておらず、各KPIが水平的に進捗管理されている。

◆成長戦略に関するKPIを特性に応じて整理し、潜在成長率と有機的に結びつけた評価体系を構築する工夫の余地が大きいのではないか。政策の実行そのものや施策の直接的な結果を目標とするKPIは従来通りの評価でよいかもしれないが、生産性上昇率の引上げといったアウトカム(成果)の要素が強いKPIの評価は、様々な経済主体の行動に依存することになるため、他のKPIやマクロ経済動向などから総合的に判断する必要がある。

◆成長戦略を遂行する上では、全体を俯瞰する視点がいっそう求められ、潜在成長率上昇への道筋を明らかにする取組みが産業競争力会議などに期待される。成長戦略の進捗評価に関する洞察力や透明性が高まれば、政府内外での議論がより活発になり、制度・規制改革への理解が深まることで改革の推進力も高まるだろう。

レポートをダウンロードする

お気に入りへ登録

この記事を「お気に入りレポート」に登録しておくことができます。

このレポートのURLを転送する

  • @

おすすめ関連レポート

お問い合わせ

PDFファイルの閲覧にはAdobe® Reader®新しいウィンドウで開きますが必要となります。お持ちでない方は、アドビ システムズのウェブサイトから無償ダウンロードができます。
なお、Adobe® Reader®のインストール方法は、アドビ システムズ ウェブサイト新しいウィンドウで開きますをご覧ください。

Get Adobe® Reader®

リサーチ

リサーチメールマガジン

大和総研研究員によるレポートやコラム、書籍・刊行物などの最新情報を適宜お届けします。



ダイワインターネットTV

2016年9月14日
労働市場から消えた25~44歳男性

2016年9月2日
なぜ地方は東京に追いつけないのか?

2016年8月25日
~第190回 日本経済予測~

2016年7月20日
女性の雇用環境と女性活躍推進法

書籍・刊行物

熊谷亮丸監修、大和総研編著
『リーダーになったら知っておきたい経済の読み方』

本書では、大和総研エコノミック・インテリジェンス・チームの選りすぐりのエコノミストが、経済指標の見方をはじめ、日本や世界経済の現状及び見通し等について、初心者の方でも理解しやすい平易な文章で、ポイントの押さえ方を解説しています。経済についてもっと詳しくなりたい方から、経済を一から学び直してみたい方まで、どんな方でも気軽に読める、面白くてためになる本を目指して執筆しました。是非ご一読ください。

鈴木 準(調査提言企画室長)著
『社会保障と税の一体改革をよむ』

「社会保障と税の一体改革」による改正事項の網羅的な解説と考察を行っています。この分野に関心をお持ちの多くの方々にお読みいただけるよう、分かりやすく記述しています。基本的な改正内容だけでなく背景にある考え方と問題点について、幅広く議論しています。

熊谷 亮丸 著
『消費税が日本を救う』

消費税率引き上げによって、財政危機・年金不安を解消し、日本経済再生への足がかりとする。 現在、最大の関心事となりつつある「消費税」について多面的に考察、日本復活への処方箋をご紹介します。