経済・社会構造分析レポート
財政再建シナリオの検討 ~マクロモデルによるシミュレーション

歳出抑制・負担増・成長力強化のすべての取組みがやはり重要

2015年10月29日

  • パブリック・ポリシー・チーム エコノミスト 神田 慶司

サマリー

◆本稿では、財政健全化レポートシリーズNo.4で示した経済と財政の長期見通しを「ベースシナリオ」と位置づけた上で、政府の経済・財政再生計画を参考に、実施する改革メニューの範囲が異なる3つのケースを想定して経済と財政の姿をシミュレーションする。試算結果は相当の幅をもってみる必要があるが、社会保障と財政の持続可能性の確保について、大まかであっても定量的な議論をすることには意味があるだろう。

◆ケースAは経済・財政再生計画で示された検討項目のうち、政府が積極的に取り組もうとする意向が窺われるものを想定したシナリオである。後発医薬品の普及促進や医療提供体制の適正化などによる医療費の抑制、非社会保障歳出の伸びの抑制などを盛り込むと、社会保障と財政の持続可能性は確実に高まる。しかし、公債等残高GDP比の上昇は止まらず、現在抱えている課題の完全な解決には至らない。

◆ケースBはケースAの改革メニューに加え、医療・介護費の自己負担を増やし、消費税率を最終的に25%へ引き上げるなど、かなり厳しい改革の早期実施を想定したシナリオである。このケースでは経済成長率が低下することに加え、国民負担率が現在から3割ほど上昇するが、社会保障と財政の持続可能性を確保することができる。ただし公債等残高GDP比の水準は依然として高く、金利上昇リスクは残る。

◆ケースCは経済・財政再生計画をはじめとする各種の成長戦略が一定の効果をもたらすことにより、ケースBの改革を実施しつつベースシナリオ並みの経済成長率を維持すると想定したシナリオである。基礎的財政収支は2020年代前半には構造的な均衡に向かい、その後も黒字幅が拡大する。2040年度末の公債等残高GDP比は第二次安倍内閣発足直後であった2012年度末の水準を下回る。将来に対する不確実性が低下すれば、家計消費や民間設備投資のさらなる拡大も期待できるだろう。

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