経済・社会構造分析レポート
社会保障と財政の長期見通し

一定の経済成長の下でも、現在の社会保障制度・財政は維持できず

2015年9月17日

  • パブリック・ポリシー・チーム エコノミスト 神田 慶司

サマリー

◆大和総研では2040年度までの社会保障や財政の見通しを2013年5月に発表した。その後、安倍内閣が経済・財政再生計画を策定するなど改革の方向性が示されてきたことや、経済・金融市場等が変化したことを踏まえて長期見通しを暫定改訂した。

◆マクロ経済指標を概観すると、実質GDP成長率は2010年代で年率1.1%、2020年代で同1.1%、2030年代で同0.8%と見込まれる。働き手の減少が続く中、労働代替的な投資や技術革新などが進み、労働生産性上昇率は年率2%程度へ加速する。

◆CPIは年率1%程度で推移し、デフレから脱却する見通しである。名目賃金は労働需給の引き締まりや労働生産性の向上を反映し、物価を上回るペースで上昇すると見込まれる。長期金利は2010年代末以降2%強で推移し、政府債務の実効的な負債利子率は2030年代に名目GDP成長率を上回る見通し。

◆年金給付費は2030年代初めにかけてGDP比で低下していく一方、医療と介護の給付費はGDPを上回るペースで増加していくと見込まれる。医療・介護費の増加は、年金以上に高齢化の影響を受けることや、高齢化以外の要因によって押し上げられていることが背景にある。高齢化以外の要因による医療費の増加をいかに抑制できるかが、社会保障制度・財政の先行きを考える上でのポイントである。

◆基礎的財政収支は黒字化には至らず、2020年代以降は社会保障費の増大によりGDP比で赤字幅が拡大すると見込まれる。本稿の予測はリスクプレミアムの発生による金利上昇を想定していないが、それでも公債等残高GDP比は上昇が続き、2040年度末には330%程度に達すると予想される。これは事実上の財政破たんシナリオと言え、それを回避するためにも経済・財政再生計画は極めて重要である。

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