アジア太平洋三人行

対談
第11回 精神文化に立脚した尊敬される日本人へと意識改革が必要(3/3)

  • ゲスト 古賀 誠氏 衆議院議員

対談動画(ダイワインターネットTV)


川村

日本は高度成長が終わり、55年体制といわれ自民党の定番であった政権が交代した前後から、国民の意識がずいぶん変わってきたような気がします。かつては、大物政治家へのリーダーシップの期待もあったし、ある程度政治家もその期待に添うことができました。しかし今は、そういうリーダーシップを政治家に求めなくなってきているのではないでしょうか。それでも国がここまで大変な状況になってくると、日本人も次第に強いリーダーシップを、強力な指導者の出現を望んでくるのではないかという気がしてくるのですけれど、いかがでしょう。

古賀

われわれ国政に携わっている者にとって一番恥ずかしいところを指摘されているわけですが、私が最初に中国に国会議員として訪問した時から数えて、今の野田さんで19人目です。

私が初当選した当時の鈴木総理から、31年で19人。その中で、中曽根、小泉両総理の時代が10年ありますから、17名で21年ということですね。平均1年あるかないか、まさに政治の貧困ですね。それと、本当にこの国をどうするかという哲学とか信念を持った政治家が必ずしも当選してきていません。今の政治家は自己表現ばかり大切にして、国民も政治家をパフォーマンスができるかどうかで評価します。私はそれにはメディアの責任も大きいと思います。その意味では、小泉さんの責任は大きいなと、それと小泉さんにぶら下がったマスコミも同様です。国民にまるでスポーツ選手や役者の芝居を見るように、劇場型の映像で伝えています。これは、失われた10年あるいは20年の象徴だと思いますね。国民もそこがわかりつつあるのではないでしょうか。また、わからない限り日本の国は沈没します。そうした国民一人一人の意識復興、意識改革、これができるかどうか、そういう教訓として受け止める必要があるのかもしれませんね。

川村

最近強く感じるのは、新しい媒体が急速に広まってきていることです。それも情報の出し手が名乗りもせず、一方的に真偽を取り混ぜた情報を山のように垂れ流す傾向があります。中国も同じような状態にあると思うのです。メディアの一部には、真実を迅速に伝えるということではなくてスキャンダルの追っかけ屋みたいになってしまっているところもあります。また、マスコミ批判と言うのは、マスコミはあまり取り上げないのですね。メディアへの対応、あるいはメディアの意識改革というのはどういうようにしたらいいのでしょうね。

古賀

私も確かな答というのはないのですけれども、政治というのは結果です。政治に結果をなくしたら、これはもう何の責任も使命もないということですね。しかし、今行われていることは、総理の言っていることについてすら誰も結果を報道しようともしませんし、追及しないですよね。私はメディアの責任として一番欠如しているところだと思うのですね。

薛軍

もう一つ、3月11日に発生した東日本大震災について、当時の政府の対応は非常に問題だと多くの人に言われていますが、古賀先生のご感想はいかがでしょう。

古賀

およそ復旧、復興の対応になっていませんでした。特に原発の処理の問題というのは、全くスピード感がない上、組織的な動きがとられず、内閣はバラバラ、官僚もバラバラでした。私はこの遅れの原因を揚言すれば、まさに内閣の貧困に尽きると思います。すべての責任を一身に自分が負う、すべての組織にその力を100パーセント、120パーセント発揮させるというのが、総理大臣のリーダーシップです。それなのに、総理が組織を動かすことができなかったのですから、スピード感が出るわけがなく、無策を通り越した復旧、復興だったと思いますね。

川村

古賀先生は官僚機構の活用の仕方が非常に巧みで、官僚からも信頼感を得ているとかねがね窺っているのですけれども、ここ10年くらいは何でも官僚が悪いという風潮になっています。これについてはどんなふうにご覧になっていますでしょうか。

古賀

誕生して2年の民主党政権には、自民党政権とはいくつもの大きな違いがありますね。日本の国は政党政治ですから、国家も国民の運命も政党に帰属するというのは当然で、だから政権を担う政党が代われば大きな変化が出てくるというのは当たり前です。今言われたのはいくつかの大きな変化が出てきているうちの一つですね。官僚の政策に関する知識、頭脳や持っている経験は、政治家が逆立ちしても敵いませんし、能力は官僚が数段長けています。この人たちの力を100にするのか200にするのかは、大臣であり、副大臣であり、政務官だと私は思いますよ。官僚の力、経験と能力を発揮させることが大切です。今の政治のように官僚を叩いていて、政治主導などというのはありえません。

それから、戦後66年のわが国の民主主義で最大の欠点は、一番大事な人づくり教育に失敗したことです。確かに経済は豊かになりましたし、すばらしい製品を作り出すことには成功しましたが。

川村

人づくりに失敗した、身につまされるお話ですね。私の大学教員の経験に照らしても実感します。

古賀

国はやっぱり人ですから。その人づくりに失敗した、これはもう間違いありません。何故失敗したか、それは残念ながら教育の現場にあることは疑いないです。

憲法改正はいろんな点で議論されていますが、私は、第9条、この平和憲法は、国の世界遺産だと言っています。この第9条は大事にしなければいけませんが、私は国民の権利と義務を定めた現行憲法の第3章は絶対変えなければならないと考えています。これを変えない限り、家族も戻って来ないし、家庭も取り戻すことはできません。第3章は、第10条から第40条まで30条の項目から成っていますが、そのうち国に果たす義務はたった3つしかありません。納税と労働と義務教育の3つです。あとは全部権利です。だから私は、憲法改正は絶対必要だと主張しています。日本の国民として権利を主張するなら、義務も同じように果たさなければいけません。あまりにもアンバランスであり、これを変えない限り、家族と家庭は帰ってこないと私は思っています。

川村

最後に定番的な質問を。日中間は、今後もあらゆる面でますます重要になっていくと思いますが、古賀先生の経験を踏まえて、日中双方に対して何かアドバイスがありましたらお願いします。

古賀

私は日中関係というのは、非常に長い歴史と、またよその国々にはない文化的な交流の歴史を有していると思います。一時期不幸な時代があったわけですが、この不幸だった時代をどう乗り越えていくのか、というのが極めて大事だと思います。今、残念ながら中国では親日家よりも親米の勢力がどんどん伸びているというのが事実です。なぜかというと、日本の国は、一番大事な日本の固有の精神文化を失ってきていますから、中国にとっては魅力のない国となっているのです。経済的な交流はどうにでも改善できるし、改革できます。しかし、国と国との信頼関係の基本は民と民との信頼なくして成り立たないのです。だから、本音で話をすることが大切だと思います。相手が嫌がること、相手が怒ることでも、もし自分がこの人とこの国と友好、信頼を続けていこうと思ったら、それを言わなければなりません。日中は、自分の考えていることをすべて素直に伝え、間違いを間違いと明確に言える、そういうお付き合いを、私はやるべきだと思います。それが続けられれば、日中というのはお互いに信頼できる国として必ず復活し、今より深い絆ができてくるのではないでしょうか。それが、日本の国のためにも中国ためにも、50年先100年先を見据えて必要なことではないでしょうか、私はそう思っています。

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アジア太平洋三人行 バックナンバー

第17回 人民元の国際化を乗り越え、中国は資金供給国としての役割の認識が必要に

  • ゲスト 渡辺 博史 氏
    国際協力銀行副総裁

貯蓄超過のアジアの資金をアジア内で循環させるには、金融取引の障壁を低くし、資金が流れる仕組みや環境の整備が不可欠だ。パンダ債発行や人民元との直接取引開始等で官が先行しているが、5-10年をかけ民間にイニシアティブを移すことが必要となろう。
人民元の国際化は不可避であり、自由化の速度をどう調節するかが課題だ。
中国が地域間の資金偏在を解消できれば、日本とともに世界に対し資金の根源的な出し手の地位にいたる。そのとき、日中両国が協力しあえば、世界への貢献度、発言権はきわめて大きくなる。それは、今後10年、20年の間に、政府や民間が互いに意識して連携できるかどうかにかかっている。

第16回 中国は、長期の視野の下で、安定的な発展モデルを考えることが必要

  • ゲスト 崔 保国 氏
    清華大学副院長

今、世界は成長の危機に直面している。100年前には目指すべき発展モデルがあったが、今後の100年を展望するとき、そうしたモデルは存在していない。中国は、自身の知恵を絞り、安定的かつ長期の経済及び社会の発展モデルを考える必要がある。
中国は一人当たりの資源量がきわめて小さいため、次代の発展を支えるのにどのようにしていくのかが一番の問題となっている。これをうまく解決できないと、世界はいつまでも爆弾を抱えているのと同じ状態になる。
問題の解をみつけるためには、今後100年といった長い視野で、過去を振り返って反省し、未来を考えていくということが必要である。

第15回 内需主導に向け、中国は為替レートの制限緩和と需要拡大策が必要

  • ゲスト 吉野 直行 氏
    慶應義塾大学経済学部教授

中国は、輸出依存による高成長から、内需拡大による成長持続を目指していかねばならない。今後、必要な政策は、為替レートについて固定制からバスケット通貨制の方向に動いていくこと、経済成長を維持するために内需の中に成長を支える柱を作っていくことだ。
内需には、消費だけでなく、住宅投資、公共投資があり、政府消費として教育、年金、医療、社会保障も増加が見込まれ、各分野で適切な政策対応が必要となる。
為替レートに関しては、バスケット通貨のウエイトを徐々に変えていく調整が適当だ。今後は、元とユーロ、元とウォンのように、自国通貨と他国通貨との交換開始というかたちで取引を拡大していくべきである。

第14回 アジアの世紀に向け、日中間の人の交流拡大が急務

  • ゲスト 福地 茂雄 氏
    アサヒグループホールディングス(株)相談役、(公財)新国立劇場運営財団理事長

21世紀はアジアの世紀といわれ、環境や水産資源などの問題も含め、日本と中国との関わりあいはますます拡大する。そうした中で、日中の相互理解の促進には、人の面で日本と中国とがもっと行き来をし、交流しないといけない。
今、日本の主要都市は太平洋側、アメリカの方角を向いているが、九州や長崎を窓口とすれば、中国は東京よりも近い。日中はその近さを活かして、物理的移動をともなう人の往来を拡大し、それにともなう物や芸術文化の動き、交流へと波及させていくことが急務である。

第13回 日本の経験を糧に、アジアの持続的な経済発展及び調和社会の実現へ

  • ゲスト 鈴木 茂晴 氏
    大和証券グループ本社 会長

中国は、経済成長過程でまだ低いところにあり、なお大きな成長の余地を残している。
世界で一番成長しているのは、中国を中心とするアジアであり、地理的に近い日本にとってビジネスチャンスが拡大している。また、日本を先行事例、または反面教師として研究することで、持続可能な経済発展あるいは調和のとれた社会の実現に近づくことも可能であろう。
地理的な近さに加え、きちんとした関係を結んでいけば、日中間は30年後、40年後も良い関係でいられるはずである。

第12回 民間同士、政府同士がウィン—ウィンの関係を保つことが交流の深化に

  • ゲスト 樋口 武男 氏
    大和ハウス工業株式会社 代表取締役会長

中国のいい点は政策運営のスピードであり、メリットといえるが、逆に言えば規制はすぐに変わる。中央や地方政府の政策運営には、つねにアンテナを張っておかねばならない。 グローバルに事業を展開していく上では、先入観で物事を判断せず、現地でしっかりコミュニケーションを交わし、ネットワークを構築するのが第一だ。
さらに民間同士だけでなく、政府間の連携・コミュニケーションをも密接にし、国同士ウィン—ウィンの関係を保つことが大事である。それによって、民間企業の関係がさらに深まっていくという連鎖が、交流を深めるには必要だ。

第11回 精神文化に立脚した尊敬される日本人へと意識改革が必要

  • ゲスト 古賀 誠 氏
    衆議院議員

本当の日本の国益は、お金ではなく文化である。それを、ものやお金の豊かさが幸せの尺度だと、高度経済成長の中で誤ってしまった。あの国はすばらしいと、日本人の精神を世界が尊敬してくれるというところの価値観への切り替えが遅れたのだ。
国民もそれがわかりつつあるのではないか。国民一人一人の意識復興、意識改革ができるかどうかに、日本の国の浮沈がかかっている。
そして、海外諸国と精神文化の面でも本音で話をできるような信頼関係を築き、継続させていくことが50年先、100年先を見据えて必要なことではないだろうか。

第10回 助け合いや絆の強まりを新たなネットワークに拡げ、岩手の復興をアジアの発展へ

  • ゲスト 達増 拓也 氏
    岩手県知事

岩手県の復興計画は8ヵ年計画であり、今はまだ最初の1年が終わった初期の段階にある。内外を含めた多くの支援を受けたので、改めてお礼を申し上げたい。ただし、復興にいたるまでは引き続き支援や協力をお願いする。
復旧・復興の中で、するべきことを明らかにし、計画にまとめ、予算や事業のかたちにして進めていけば、地元の底力に海外を含め外からの力も加わって、大きな力で復興を果たすことができると思う。復興を果たした上で、アジアに貢献できる岩手県として、アジアの皆と一緒にアジア全体の発展に力を尽くしたい。

第9回 多様な相手への深い理解が長期の暖かい交流の礎に

  • ゲスト 前田 新造 氏
    株式会社 資生堂 代表取締役 会長

日本がグローバル化を果たす上で克服しなければならないのは、相手をどれだけ深く理解できるかだ。多様な人々や国情に対応し、共存を図っていくことが重要である。中国進出でも、現地のお客様を知るということを大切にし、経営、研究開発、美容相談等いかに現地に根付いていくかを考えてきた。 中国とは歴史的な交流が深く、漢字文化など互いに共通する面も多い。相手を理解しようという心を先ず持つことが必要だ。その上で、中国の人々といい関係が続く時間をどれだけ長くできるかと考えると、百年の大計が大事なキーワードとなるのではないか。

第8回 境界の思想から共存の思想へ

  • ゲスト 山内 進 氏
    一橋大学学長

国際政治の発想として、「俺とお前たちは違う」とラインを引く境界の思想がある。一方「私とあなたは違うかもしれないが、お互い仲良く暮らしましょう」という共存の思想がある。19世紀までヨーロッパの基本的な動きは境界の思想であって、そうして自分たちの世界を拡大してきた。しかし、もともと文明は並列的に存在し、相手に対抗する場合でも文明の新しい担い手が、共存の思想を持って進んでいけば衝突は起こらない。そういう衝突が起こらない世界を作っていくことが期待されている。

第7回 国の強みを活かす構造改革が中国の安定成長への途

  • ゲスト 大田 弘子 氏
    政策研究大学院大学 教授

その国の持っている強みが存分に活きるような仕組みを作っていくことが構造改革である。中国の強みは大きい消費市場であるが、貧富の格差が大きいと十分その強みは発揮することはできない。今年からスタートした第12次五カ年計画は、消費主導の安定した経済構造に変えていこうというよくできた構造転換のメッセージであり、5年間でこれが実行できれば、中国経済は新しいステージ入りが実現する。また、格差があることへの不満に対し、努力すれば豊かになれるという可能性が開かれた社会の実現が重要である。

第6回 日中関係は「対等」という二文字が大事

  • ゲスト 加藤 嘉一 氏
    コラムニスト

情報発信には経験の力と若い力の両方が必要だと思う。中国は例外を排除しない土壌で、日本よりもフレキシブルであり、若い人間にチャンスを与えている。現在の日中両国は歴史上初めて同じような国力で存在しており、互いに「対等」の意識をもつことが大切。中国の長期的発展にはアメリカ的発展モデルは必ずしも適しておらず、いろいろな問題で米中間の橋渡し役を担うことが出来るのは日本だけである。

第5回 新たな発展過程への切替えを迫られる中国経済

  • ゲスト 渡辺 利夫 氏
    拓殖大学学長

中国は、台湾や韓国、日本と同様に、政府が強いリーダーシップの下産業政策を遂行し、発展が始まった。鄧小平の改革により国有企業が効率的に動き出し、その後の経済発展は日本と異なり外資主導型で進んだ。今後は、外資系企業の民族企業への転換、また成長方式の転換と成長の質の向上が中国経済の安定的成長のポイントである。

第4回 歴史に学ぶ日本の課題と中国とのつきあい方

  • ゲスト 堺屋 太一 氏
    作家、経済評論家

日本は世界の価値革命の潮流を見誤り、対応に失敗し下り坂になった。まだ、厳しい時期が何年か続いてようやく新しい日本を作る気運が出てくるのではないか。
一方、台頭する中国とつきあっていくためには、中国は巨大な国で多様な国であり、またオリジナルを重視する国であることを念頭に、中国の文化、中国の人というものを素から知っておく必要がある。

第3回 中国・日本の中央政府と地方自治

  • ゲスト 麻生 渡 氏
    前福岡県知事、前全国知事会会長

中国・日本の地方自治体間の地道な友好提携は大切である。中国では中央政府が養成した人材を地方に配置するという伝統に根ざした優れた統治システムが機能している。日本は、官僚主導から政治主導への転換があまりうまくいっていない。

第2回 高成長中国の構造的問題とその対応

  • ゲスト 河合 正弘 氏
    アジア開発銀行研究所(ADBI)所長

所得格差や貧富の格差の問題に対して中国はまだまだやれることがある。例えば税制、社会保障、教育や医療への投資。またメディアの力を活かすとともに、司法制度の整備を進めることで環境問題や公害問題に対処できる。

第1回 高度成長期の日本と現代中国

  • ゲスト 宮﨑 勇 氏
    元大和総研理事長(元経済企画庁長官)

中国は高度成長期の日本と似ているが、日本では高度化の過程で所得格差が縮小したが中国では拡大している。しかし当時の日本もけっしてうまくいく事だけではなく、多くの失敗をした。中国は課題の解決に向けて自信を持って良い。

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