大和総研
「東日本大震災からの復興に関する地方公共団体アンケート」の集計概要と集計結果

2012年3月8日

  • 株式会社大和総研
  • 調査提言企画室

未曾有の被害を出した東日本大震災発生から間もなく1年が経過する。これまで大和総研は当震災に関して「復興基金と復興連帯税の創設」(2011年3月18日付)や「電力供給不足問題と日本経済」(2011年7月13日付)をはじめとする様々な提言やレポートを出してきたがあらためて震災発生後1年の現状を総括することとした。

まず被災地の現状を調べるために2月初旬、各地方公共団体にアンケートを送付した。復興(復旧)計画策定の有無や時期、進捗状況に対する評価について、復興に際して各地方公共団体や被災者に足りないものや事柄、被災事業者が課題としているものや事柄を各地方公共団体としてどのように認識しているかなどをその内容とした。また国、県、町村の各地方公共団体レベルでどのような支援が期待されているのかについても訊ねた。

さらに報道機関の報道姿勢や期待される報道対象についても質問することとした。この設問を入れたのは今回の震災においてとりわけ正確な情報提供に資するメディアの重要性を再認識したためである。

アンケートの概要

項目 具体的内容
アンケート対象 「東日本大震災復興特別区域法」(以下、震災特区法)の対象とされる222市町村およびその属する11道県(※)
実施時期 平成24年2月1日~2月15日(一部、その後の回答も含む)
アンケート方法 郵送およびFAXによる回収
回収率 140地方公共団体(回収率 60.1%)

※ 実施期間中(2月17日)に5市町村が追加されたため現在、被災市町村数は計227。
以下、個別回答については各地方公共団体の匿名希望を尊重して(所在の道・県名/市町村の区別)とする。

復興計画策定次期

1 復興計画の策定について

本アンケートに拠れば、すでに復興計画を策定している道・県および市町村は52、検討中が28、策定に入れていないが5、予定がないが52であった。
復興計画の策定について「予定なし」と回答した地方公共団体が多かったが、その理由の多くは「被害が小さかった(なかった)ため」であった。「個別の復興計画は策定せず、総合計画の見直しに盛り込んだ(岩手県/市)」との回答に代表されるように同じ県であっても津波被害のあった沿岸部は復興計画を策定して対応しようとしている地方公共団体が多いが、内陸部では沿岸部および他県への後方支援や被災者受け入れなどの対応を行い、必ずしも復興計画を策定していないといった状況がうかがえる。「(計画策定に)入れていない」という回答は少ない。

計画の策定時期

アンケート集計によれば、策定時期には2つのヤマが見られる。
2011年9月と2012年12月である。これは発生後6か月と2011年の年内の計画策定を意識されたものであろうと推定される。

策定上の方針

表現の仕方は多岐に亘るが要約すれば、“住民が安心・安全に暮らせるまち”、“早期の生活基盤の確保”、“災害に強いまちづくり”といった共通性が見てとれる。同時に「安全な居住地の確保と”減災”という視点を取り入れた新しい港町づくり(宮城県/町)」、「市民が未来に夢と希望を持てる復興にすること(福島県/市)」といった住民の不安を解消する上で、今回の震災を教訓にした見直しや将来を展望した長期的なプランの作成という視点での計画策定も少なくない。また地方公共団体からの調査であるため、住民や有識者など各層からの意見を聞き、集約したという策定アプローチへの言及もある。

2 復興計画の実行状況について

順調な実行状況6、おおむね順調(若干の項目にのみ滞りがある)32、順調な実行ができていない(かなりの項目に滞りがある)9という結果であった。計画策定が2011年末や2012年以降という地方公共団体もあり、進展評価については「策定から間もないため回答不能(福島県/市)」という声もあった。遅れている理由としては各種の調整に時間がかかっていることが挙げられるが具体的には放射能汚染への対応(除染、仮置き場の確保、補償など)や液状化対策、先行きが見通せていないことなどとなっている。順調な実行ができていない分野としては、公共交通の復興(鉄道の復旧含む)や道路、災害復興住宅の建設の他「除染、解体やがれきの処理(福島県/市)」と指摘する声もある。

3 復興を進めるにあたって必要度が高く、現在不足しているモノ、コト

(ア)地方公共団体として

地方公共団体として不足しているもの(複数回答可)としては、第一に財源93、次に専門人材71、職員の数57と続いた。復興事業の執行のための財源の不足は被災地地方公共団体として強く認識しているようだ。「専門人材と職員数が不足している(茨城県/市)」とマンパワーの不足感も大きい。また「復興特区の計画策定業務に時間を割かれ、市計画の策定業務に手をつけられない状況となっている(宮城県/市)」など特区申請における様々な計画策定も負担になっているとの指摘があった。

(イ)被災地の住民にとって

雇用機会80、生活資金62、被災地の将来展望に関する情報45の3つが突出している。雇用機会については震災前後の比較はできないが、回答の最上位となった。報道等から抱く徐々に経済的な支援体制は揃ってきているのではないかという印象からすれば、1年を経ても生活資金の不足を回答の上位とする地方公共団体の認識から、被災地の生活実態を窺える。被災者にとって将来展望についての情報も同様に重要な課題である。本アンケートでは医療、教育の項目への回答は多くなかった。

地方公共団体/被災住民
被災地事業者

(ウ)被災事業者にとって

風評被害89、事業資金の不足74が突出している。次に販路回復の遅れ、販売価格の低下、専門人材の不足、一般労働者の不足、事業コストの上昇と続く。風評被害の多くは放射能汚染に起因しているものと思われる。これが販路回復の遅れや価格の低下に結びついていると思われる。住民と同様に様々な経済的な支援が始まってきている中で事業資金の不足を挙げている地方公共団体が多い。

4 他の公的機関に対して望むこと

国に対して望むこと

国に対する希望では、自由意見の記述に含まれるキーワードによって傾向を推し量ることができる。まず対応については、「原子力災害は国が責任を持って欲しい(福島県/村)」といった放射能汚染対応について除染や補償を含めて国の積極的な関与を求めている。次に、復興における方針や要領の決定、財源、財政支援といった言葉が多く含まれる。前者においては、迅速さや明確さを望む多様な声も窺える。

震災特区法については、「復興特別区域法等に伴う計画策定は、非常に煩雑で、事業選択のハードルも高い(福島県/町)」といった使い勝手の悪さを指摘する声が多い。また復興交付金についても「被災地自治体が真に必要とする事業に活用できる、使い勝手のよい制度として欲しい。(岩手県/市)」といった意見が多かった。

アンケート実施時期と重なったこともあって「復興庁による真のワンストップでの対応(茨城県/市)」に見られる復興庁に対する期待(縦割り行政の克服)もあった。

県に対して望むこと

国との交渉窓口としてより積極的な働きかけを求める意見が多かった。よくやっている、今後も引き続き協力をとの声がある一方で「国と市町村をつなぐパイプ役としての調整力の発揮(宮城県/町)」、「防潮堤高の決定などについて国の方針を、そのまま受け入れるのではなく、市町村の要望を国に認めてもらえるよう努力して欲しい(岩手県/市)」「国からの通知を単に転送するだけでなく、県としての考え方、取り扱いを具体的に示していただきたい(宮城県/町)」といった指摘もあった。その他「復興に関する各種制度の分かりやすい説明や情報提供(茨城県/町)」など、市町村への情報提供に対する希望も強い。さらに「市町村に県より数名職員を一定期間派遣し調査や情報収集等に協力してもらいたい(千葉県/市)」といった職員派遣や人材支援などへの協力も期待されている。

市町村に対して望むこと

これは、もっぱら県からの意見になるため数が少ないが「被災者に身近な行政機関として県と連携しながらきめ細かい対応を望む」という意見に集約されよう。

5 報道機関に対して望むこと

報道については「国民に対し、正しい情報を的確にわかりやすく誤解を招くことのないよう報道願いたい(福島県/市)」、「ごく一部の被災者等の意見に左右されず、報道の正確性・客観性が保たれるよう取材対象は広くしていただきたい(岩手県/市)」、「津波被害と原発事故被害等に報道内容が集中する傾向がある(宮城県/市)」、「大気中の放射線量や食品の放射能濃度などについて正確に報道するとともに、安全性が確認できた場合は、その旨を確実に伝えること。(茨城県/市)」といった「客観的・正確」「偏らない・多面的・公平」な報道を望む声が多い。それらによって「風評被害の払拭に繋がるよう現地に足を向け報道して欲しい(福島県/町)」といった報道による風評払拭の効果も期待されている。

一方で「阪神・淡路大震災と比べて復興のスピードが遅いという声を聞きますが今回の震災による被災は甚大かつ広範にわたっており、一歩一歩着実に取り組んでいく必要があり、当然、スピード感を持って取り組んでいく必要があるが被災者の不安を煽るような報道はやめていただきたい(宮城県/市)」のように、一部に「扇る」、「興味本位」な報道があったのではないかという不満の声がある。同時に「前向きな取組」への「継続的」な取材への期待や、「津波をうけていない被災地も大きな被害を受けていることを伝えてほしい(栃木県/市)」との意見も寄せられている。

アンケートや取材対応については「窓口の一本化:問い合わせが多すぎて通常の仕事ができません。(福島県/町)」という指摘もあった。

特徴的な自由意見

特徴的な自由意見

結び
最後に、あらためて今回の震災の犠牲者の方に哀悼の意を表したい。日常業務多忙の折、調査に協力していただいた各地方公共団体の担当者の皆様に感謝を申し 述べるとともにまだ課題が山積し、多くの困難の下にある被災者にとってこうした調査が少しでも復旧・復興の一助になれば幸甚である。

関連資料

本件に関するお問い合わせ

当件に関するお問い合わせ先
株式会社大和総研 経営企画部広報課 豊田
TEL:03-5620-5429 E-mail: press@dir.co.jp

PDFファイルの閲覧にはAdobe® Reader®新しいウィンドウで開きますが必要となります。お持ちでない方は、アドビ システムズのウェブサイトから無償ダウンロードができます。
なお、Adobe® Reader®のインストール方法は、アドビ システムズ ウェブサイト新しいウィンドウで開きますをご覧ください。

Get Adobe® Reader®