大和証券営業店 基幹インフラ更改プロジェクト

大和証券の全拠点で基幹インフラを全面更改

2012年11月某日。当時、フロントシステム開発第二部だった齋藤は、大和証券の基幹インフラ更改プロジェクトのプロジェクトマネジャー(PM)に任命された。大和証券リーテル部門では2006~2008年にかけて集中的にインフラ投資を行ってきたが、導入から5~10年が経過し、機器の老朽化やシステムの保守切れなどを契機に、一括での全面更改に踏み切ることになったのだ。この機をチャンスと捉え、単なる基幹インフラ更改にとどまらず、営業員の業務効率向上やお客様へのサービス向上を実現できる次世代インフラ基盤を提供するという高い目標を設定。2012年4月頃から、検討が重ねられていた。
本プロジェクトは、その目標の高さゆえに検討が難航した。フロントシステム開発に携わる齋藤にとって、電話や業務用端末など店舗のインフラについては専門分野が違うこともあり不安があったが、新しいことに挑戦できるチャンスでもある。もともとポジティブな性格の齋藤の胸に「よし、やってやろう!」という決意がみなぎった。

同じ目標に向かってユーザと分業で推進

齋藤:プロジェクトの体制としては、大和証券・大和総研双方の担当役員直下にPMが任命され、私は大和総研側の開発責任者でした。外部ベンダが受注するような一般的プロジェクトでは、開発担当PMは発注元であるユーザ側のオーダーに従ってプロジェクトを進めますが、本プロジェクトは大和証券側のPMがビジネスサイドを取りまとめ、私が開発の責任を負う、分業に近い形で推し進めていきました。また、両社の役員がともに課題に対して即断即決するスピード感のある推進体制を構築し、大和証券グループを挙げて取り組むという、非常に特別で重要なプロジェクトだったといえます。私は大和証券グループの一員として、同じ目標に向かって自分の役割を全うし、責務を果たすべく業務に取り組みました。

事前の集中検討でシステムの全体像を共有

本プロジェクトにおいて具体的に更改すべきインフラは、「IP電話」「通話録音システム」「統合シンクライアント端末」「ネットワーク」の4つ。また、営業の質・量向上に資するインフラ基盤とするためには、各々の機能が効率的に連携し、最新IT技術や製品、デバイスが効果的に活用できる環境構築が必要となる。加えて、プロジェクト実現に向けて最大のポイントとなったのは、短い納期の中でプロジェクトを完遂すること。残されている時間は少なく、営業店側の業務体制やお客様への対応を考慮すると、より迅速なスピード感が求められた。
齋藤がまず着手したのは、大和証券と外部ベンダを巻き込んで、どういうニーズがあるか、それをどうやって実現するか、そのために必要なシステムはどんなものか、などの課題について集中検討することだった。週2回、数時間かけて徹底的にディスカッションを行い、その結果を現場だけでなく、大和証券・大和総研の役員とも情報共有した。ようやく「これならいける!」という手応えを感じられるところまで詰めることができたのは、約3カ月後だった。
プロジェクトの方向性は決定したが、とにかく時間がない。ビジネスサイドからの要望もあり、実際の店舗展開期間は当初の6カ月から4カ月に短縮されたのだった。この困難を極めた展開作業の現場指揮を執ったのは、大和証券に10年間出向し、前回のインフラ更改も経験した水谷浩樹だった。

「いける! やれる!」と思わせることに力を注いだ

水谷:齋藤さんから依頼があった時は、通常では半年から1年かかる作業ですから、躊躇しました。具体的な展開計画が決まらない中、ベンダは難易度の高さから弱音も吐いていましたし、ユーザ側からも本当にできるのかという心配の声が聞こえてきました。そこで、展開前までに「できる」とみんなに思わせることに目標を設定。各社リーダーからは個別ヒアリングを実施して課題と解決策を挙げてもらい、会議では50の課題を1つ1分でスピーディーに解決していきました。実際、解決策を考えてこなかったり発言しない人は遠慮なく退場させるなどの厳しさをもって進めました。こうして、何日もかけて取り組んだ移行計画が社内とユーザから承認された時には、「これならやれそうだ」という雰囲気が醸成されていました。2014年6月から、実際の展開作業がスタート。ピークの7~8月は猛暑の中、大和総研本社ビルに毎週末100人以上の社員が集結し、全国の店舗内作業者に指示を出しました。各店舗での想定外事象は数多くありましたが、毎週末がお祭りのように感じられて楽しかったです。

最先端技術の導入で困難な条件をクリア

今回のプロジェクトの象徴的な事例は、約15,000台の業務端末のシンクライアント化だろう。シンクライアントとは、ユーザ端末では最小限の処理をして、ほとんどの処理をサーバで集中管理するシステムだ。使い勝手自体は普通のパソコンと同じだが、ハードディスクを搭載せず、アプリケーションやデータはサーバ側で実行・管理することで、業務の効率化・標準化に加え、セキュリティ向上を実現する。インフラグループリーダーとしてシンクライアント化を担当したのは、オープンシステム開発部の鈴木喬。単なるOA端末ではなく、株式発注などで利用される業務端末のシンクライアント化のため、障害が発生しても業務を継続できることが最優先とされた。そうした条件のもと、インフラチームが試行錯誤を繰り返しながら徹底的に検討を進めた結果、当時は最先端技術であったオールフラッシュストレージを選定することになった。PMの齋藤は、最先端技術を自ら選定・導入できた貴重な経験が、本プロジェクト終了後の案件においても、システムに対する考え方や開発・導入のプロセスという面で適用できていると実感。「端末性能が向上して快適に利用できている」というユーザの生の声に触れて、大きな達成感も得られたと言う。
2014年9月、全店舗の展開作業を無事に終え、プロジェクトは完了。本来であれば数年かけてもおかしくない規模のプロジェクトであったが、構築から実施まで2年に満たない期間で完遂し、特に各営業店展開は4カ月という短期間で成し遂げることができた。これは、PMを務めた齋藤、展開作業の指揮を執った水谷、インフラ設計を担当した鈴木らPJメンバーをはじめ、大和証券・大和総研の社員が一丸となって課題に立ち向かった結果である。それは、大和証券グループ全体にとっても大きな成果をもたらすものだった。

大きな達成感と貴重な体験が今後の財産に

鈴木:15,000台規模のシンクライアント端末を支えるインフラ基盤において、大きな障害も発生させずに安定稼働できていること、また、エンドユーザからシンクライアント化によって端末の性能が向上し、快適に利用できているという生の声を聞けたことが大きな達成感につながりました。また、最先端技術を自ら選定・導入できたという貴重な経験は現在の案件にも確実に活かせています。これは、ユーザやベンダ、社内の関係部署と密に連携を取りながら、人とのつながりやコミュニケーションを大事にしながらプロジェクトに取り組んだ成果だと実感しています。そして、自ら声を挙げれば若手でも重要な案件を任せてもらえる大和総研の社風に触れ、今後の仕事へのモチベーションが高められました。

大和総研として大きな信頼を獲得できた

齋藤:今回のプロジェクトを通して、私自身はPMとして証券ビジネス全体を視野に入れてプロジェクトを推進するためのノウハウを体験的に学ぶことができました。上司である役員の経営判断や各部署の考え方、仕事の進め方に直接的に触れ、それに対してどんな情報や選択肢を渡して判断を仰げばいいかという、モノの考え方が理解できた気がします。また、単なるシステム更改ではなく、業務効率化・サービス向上につながる次世代インフラ基盤の構築という、ビジネス面での目標を共有しながらプロジェクトを推進できたのは、同じ大和証券グループの一員だからこそ。この成果によって、大和総研という会社がグループ内において大きな信頼を得ることができたと自負しており、今後の業務フィールドの拡大にもつながります。さらに、大型プロジェクトの中で最先端技術を扱うような案件でも、今回のように若手がしっかりと関わっていけたことは、働く場としての魅力を社内だけでなく、これから弊社への就職を志す人たちにもアピールしたいと思っています。