ミャンマープロジェクト

官民一体となった一大プロジェクトが始動

2012年6月。当時、システム部門に勤務していた大屋は、異動を命じられた。入社以来、一貫してシステム部門でキャリアを積んできた大屋だったが、今回のミッションは未知の領域と言えた。「ミャンマープロジェクト 事務局リーダー」。それが、彼に課せられた新たな役割だった。
もともと大和総研とミャンマーはつながりが深く、1996年には大和総研とミャンマー国営銀行の共同出資で、ミャンマー証券取引センターが設立されている。その後、米国の経済制裁の影響などでその動きは停滞したが、2008年以降、民主化の進展で再び活発化し、2012年5月、大和総研・東京証券取引所・ミャンマー中央銀行の間で、資本市場整備・証券取引所整備支援に向けた覚書が締結された。
覚書締結を受け、大和総研では「ミャンマープロジェクト」が立ち上げられ、大和証券グループ、日本取引所グループ、日本政府、ミャンマー政府とも連携した一大プロジェクトが始動した。全社的なスケールで社員を動かすことが求められ、その舵取り役が、大屋たちのプロジェクト事務局だった。

ミャンマーの経済発展にも貢献できる醍醐味

大屋:ミャンマーの案件は覚書締結前から社内では盛り上がっていて、私がいたシステム部門でも調査業務などで多くの社員がすでに稼働していました。ですから、異動の話がきたときもある程度覚悟はできていて、不思議と不安はありませんでしたね。このプロジェクトの直接的なゴールは近代的な証券取引所と証券会社を設立し、ミャンマーの資本市場を整備することにありますが、それが実現すればミャンマーという国の経済発展にもつながるはずです。日本政府も法令や金融規制の枠組み支援で関わっている官民一体のプロジェクトであり、そういう意味でもスケールの大きい仕事なので、そのとりまとめ役を任された責任とやりがいを同時に感じながら、プロジェクトに着手した覚えがあります。

情報の流し方を工夫して業務効率化を図る

当面のゴールは2015年中の証券取引所開設である。手始めとして何をするべきか。大屋はまず、資本市場運営の歴史がないミャンマー側に、どういう市場にすべきか、市場開設に際してどういうことが必要か、他のASEAN諸国の状況はどうなっているのか、などについて啓蒙・教育していく必要があると考え、社内の専門家たちを集めてレクチャー用の資料とDVDを作成した。また、プロジェクト初期は法律や制度面での整備が中心だったので、財務省や金融庁との交渉、大和証券や日本取引所グループとの連携が必要となり、大屋は役員への依頼や調整などに奔走した。
プロジェクトが本格的に動き始めると、リサーチ、コンサルティング、システムの各部門の社員も関わってきて、社内外問わず数え切れないくらいの関係者が存在し、大屋はその意見調整に追われた。最も気を配ったのは、情報の共有である。大屋のところには立場上、さまざまな情報が入ってくるが、どの情報を誰と共有すべきかを意識することで、業務の効率化を図ったのだ。
大屋としては、異動直後からいきなり仕事がピークを迎え、無我夢中で走っているイメージだった。そんな中、2013年4月には大和総研とミャンマーのACE社との間で合弁会社(DIR-ACE Technology Ltd. : DAT)が設立された。証券取引所・証券会社のシステム構築支援のコアとなる会社だ。約100名のミャンマー人社員が勤務している。ミャンマーの流儀や文化、習慣に合わせてプロジェクトを進めるためには、必要不可欠な存在であった。

自国への貢献に誇りを持つ

カリヤ ソー:私は現在DATの部長として、人材採用、人材育成、財務経理などを含む経営全般を役割として担っており、全体のプロジェクト管理も行っています。株式取引や証券市場について基礎を学んでいた経緯もあり、資本市場におけるIT活用の可能性を追求したいと思っていた私にとっては、このプロジェクトへの参画は大変意義深いことでした。DATの社員たちも、ミャンマーの経済発展に貢献できていることを大変誇りに思っています。このプロジェクトでは、大和総研との協働を通じて日本のビジネス習慣についても多く学べており、今後自社の発展のために、より技術やノウハウを高めていきたいと考えています。

ミャンマー出張で確かな手応えを実感

証券取引所・証券会社の設立には金融システムの構築が急務だ。2013年10月には、現地でシステムのデモンストレーションが大々的に開催され、その後、大屋自身も個別のシステム説明などでミャンマーへ度々出張している。実際に現地の関係者に会って驚いたのは、「大和総研はよくやってくれる」「感謝している」という反応の多さだった。その言葉に、1990年代から大和総研の先輩たちがミャンマーで積み上げてきた“財産”の大きさを実感させられた。
プロジェクト開始当初からスケジュールは非常にタイトであったが、大屋たち事務局メンバーの調整力と、プロジェクトに関わるすべてのスタッフの協力の結果、2014年末には証券取引所の運営を手がける合弁会社の設立にこぎ着けた。今後は2015年内の証券取引所開設に向けて、システム導入や人材採用の準備を進めていく予定だ。一国の資本市場整備をトータルでディレクションできる会社は数少ない。大和総研グループにはそれを可能にする幅広い機能がある。大屋はこのプロジェクトを通して、改めて大和総研グループという企業のスケールメリットと魅力を再確認したのだった。

3部門の融合が実現したことが今後の財産に

大屋:大和総研グループは、リサーチ、コンサルティング、システムの各部門ともレベルが高い専門家集団です。本プロジェクトでは、それぞれの専門性が高く独自の“文化”があるがゆえに、相互理解に時間が必要になる場面もありました。そこで、3部門の専門性を融合することが自分の役割だと考え、お互いに理解し合えるようにフォローすることを意識しました。私自身、システム部門出身なので、リサーチやコンサルティング担当者の専門的な話を聞くことで新しい発見があり、大きな刺激にもなりましたね。会社全体としても3部門が融合してひとつの大きな事業をやり遂げたことが、今後の大きな財産になると考えています。また、ミャンマーという国を相手にしたことで、海外での仕事のノウハウを蓄積できたことにおいても、今後につながる大変貴重な経験となりました。