財務体力がものを言う時代

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2009年02月20日

  • 佐藤 祐一

日本企業の倒産が増え始めている。東京商工リサーチによると、2008年の倒産件数は、15,646件で、2003年(16,255件)以来の水準となった。ただし、上場企業の倒産件数は33件で、これは2002年の29件を抜くものである。特に、新興不動産企業が相次いで、経営破綻したことが世間の耳目を集めた。これらは、積極経営により資産・負債を急激に拡大していたが、経済環境の急激な変化により、財務内容が一気に悪化し、満足な対応策もとれないまま資金繰りに行き詰まったとみられる。これらの企業の中には、2007年度に過去最高の利益を更新したばかりだったものが、2008年度に入って状況が急激に悪化して、突然死に近い状態で破綻に至った企業もある。

今回の不況は長期化することも予想されているが、そうなると、今後はいわゆる不況型倒産の比率が高くなるのが普通の展開である。不況型倒産は、販売不振、赤字累積、売掛金回収難などが主たる原因とされる。基本的には、販売不振により赤字決算が続き、自己資本比率の低下など財務体質の悪化から企業の信用力が徐々に低下していく形になるとみられる。前述の突然死的な経営破綻に比べれば、破綻に至るまでの時間的な余裕はあるものの、販売不振等、その企業にとっての構造的な問題が解決できなければ、倒産は時間の問題であるとも言える。再び、景気が回復するまで財務体力が残っているかどうかは大きなポイントと言えよう。  

倒産件数の推移

では、日本企業の財務体力の状況を見てみよう。財務省の法人企業統計調査によれば、日本の法人企業の自己資本比率は90年代末期以降、上昇傾向を強め、2007年度末には、33.5%まで上昇している。これは、日本企業が長年取り組んできた財務リストラが成功したことを表していると言ってよい。総資産の拡大を抑制し、2002年度以降、企業収益が回復する中で、有利子負債の返済原資を確保していった。財務リストラを積極的に進めた企業は、設備投資も抑制気味になるので、企業のあり方としては派手さに欠けていたことは否めない。  

有利子負債依存度・自己資本比率(金融除く全産業)

しかし、今回の世界的な金融危機及び経済危機の影響で、先進国の大企業が軒並み疲弊する中では、財務体力を回復した日本企業の存在感は、今後、確実に増していくように思われる。現に、2008年は、2年ぶりに日本企業による外国企業を対象とした大型M&A案件が相次いだ。今回の不況が今後どのように展開していくかは不透明であるが、将来的には、世界的な規模でのさらなる業界再編の可能性もありうるとすれば、これまで積極策を自重し、財務体力を高めてきた日本企業にとっては、チャンス到来と言えるのではないか。

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