局面変わった中小型液晶セクター

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2007年07月23日

  • 杉下 亮太

中小型液晶は日本メーカーのシェアが高い分野だが、05年以降に台湾メーカー・韓国メーカーが参入を本格化させたことが大幅な市況下落につながり(06年は50%もの下落)、厳しい事業環境が続いてきた。ところが今年に入ってから中小型液晶価格の下落速度は緩やかになっており(7月までの時点で10%以下)、一部では値上げも実施されている。価格上昇が特に顕著なのが7インチの液晶パネルである。4月から4ヶ月連続で値上げされており、US$20だったのが7月時点でUS$25となっている。また、2インチクラスの携帯電話用液晶パネルやデジタルカメラ用でも、一部では若干ながら値上げが行なわれた。中小型液晶の値上げは史上初の出来事とされる。

中小型液晶の需給バランスを推計するのは非常に難しい。冬場は季節要因で需給が緩むことも想定される。しかしながら、中期的に見て需給は逼迫気味の推移が続く可能性があり、その意味で中小型液晶セクターは局面が変わったと考えている。

まず、需要面では7インチクラスの需要増が加速する可能性が出ている。従来、7インチといえばカーナビ/カーモニターとポータブルDVDプレイヤーくらいしか市場がなかったが、新たなアプリケーションとしてデジタルフォトフレーム(DPF)需要が立ち上がり始めた。DPFは写真たてのデジタル写真版で、米国などで人気化の兆しが出ている。06年の需要は200-300万台と推計されており、07年は一気に1,000万台まで拡大するとの見方もある。

また、OLPCやUMPCといった小型モバイルPCの生産が07年後半から増加し始める見込みであることも、7インチクラスの液晶需要を後押しするだろう。OLPCは発展途上国の教育市場用として開発中の小型PCである。UMPCはPDAとノートPCの中間のような位置づけといえるが、今年後半から低価格機種の投入が予定されており、普及が進む可能性がある。

一方、供給面を見ると、中小型パネルを生産する第3世代(3G)工場ないし4G工場は能力増強投資がほとんどなく、3G/4G工場でのPC用パネル生産を減らすことでしか能力増を図ることができない。

こうしてみると、中期的に中小型液晶の需給は逼迫気味となる可能性も想定され、その場合はパネル市況の安定的な推移が期待できるだろう。

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