エマージング国投信の新トレンド:BRICsファンド

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2005年03月03日

  • 西井 和

投資信託は、その時々のブームやトレンドを反映し新規に設定されることが多い。近年ではBRICsに投資する投資信託(※1)(以下、BRICsファンド)が注目されている。

BRICsはブラジル、ロシア、インド、中国の頭文字をとった造語である。これら4ヵ国は、1)広い国土、2)豊富な天然資源、3)膨大かつ勤労世代比率の高い人口、4)競争力のある産業、等を背景に今後の高い経済成長が予想されている。BRICsは2003年にゴールドマン・サックス証券のレポートで高い成長予測が発表されて以来、注目されるようになった。同レポートでは2050年には世界のGDP上位6ヵ国中4ヵ国をBRICs諸国が占めると予測している。2050年はまだ先の話ではあるが、足元の04年~05年について見れば、BRICs諸国の経済成長(予測)は堅調のようだ。ブラジルは先進諸国並みであるものの、他の3ヵ国については先進諸国を大きく上回っている。

またBRICs諸国の株式市場は先進諸国並みとはいかないまでも、銘柄数・株式時価総額において十分なレベルに達している。インド、中国、台湾など外国人の投資に制限のあるところもあるが、譲渡可能証券(※2)やDR(※3)等に投資することで株式に投資するのとほぼ同様の収益を得ることができる。

BRICsファンドの魅力と留意点

個人投資家がBRICs諸国の株式を自ら選択・投資するのは手間がかかる上、資金の制限もある。その点、BRICsファンドは手軽で有効な投資手段となり得る。1)小額の資金から投資可能、2)先進国にはない高い経済成長を背景とした高い投資リターンを期待できる、点が最大の魅力であろう。

ただし、BRICsファンドへの投資として以下の点に留意したい。まず、一般にエマージング国への投資はカントリーリスクを伴うという点。先進諸国と比べると相対的に経済基盤が脆弱であるため、予想外に政治・経済状況が変化し、市場が混乱する可能性がある。こうしたリスクにより、エマージング国への投資リターンは、その変動性が大きくなる傾向にある。

また、為替ヘッジが無いファンドは為替変動の影響を受けるという点。投資対象のBRICs諸国通貨と円との為替水準にも十分留意すべきである。
さらに信託報酬率にも留意したい。総じてエマージング国へ投資する投資信託の信託報酬率は高めではあるが、その水準はファンドにより異なる。投資内容が同等のファンド間で、信託報酬率を比較検討するのも良いだろう。

(※1)05年1月末時点で、国内には中国圏ファンドが26本、インド株式ファンドが4本存在する(いずれも追加型株式投信)。
(※2) 規制・制約のある国へ投資する外国人投資家向けに発行される仕組み証券。ほぼ、現地の個別株式の株価に為替を反映した値動きをする。
(※3) 預託証書。株式を海外でも流通させるために株式を銀行等に預託し、その代替として海外で発行される証券をいう。ほぼ、現地の個別株式の株価に為替を反映した値動きをする。


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