堅調なイギリス住宅市場

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2004年02月09日

  • 服部 亮三
先週2月5日、イングランド銀行は政策金利を25bp引上げ4.0%にした。同行は昨年11月にも25bp引上げており、米欧日の中央銀行が据置きを続ける中、イギリスの動きは突出している。

実際、その経済は非常に好調だ。昨2003年第4四半期のGDP(速報値)は前期比+0.9%・前年同期比+2.5%と高く、第3四半期(各々+0.8%・+2.1%)より加速した。この前月比+0.9%という数字は、2000年第1四半期以来の高いものである。だが、この高成長は民間消費のみに依存している。第4四半期の詳細はまだ出ていないが、第3四半期の前期比+0.8%の内+0.6%が民間消費によるものだった。

この民間消費の高い伸びを支えている要因の一つが、住宅価格の高騰である。住宅価格は2003年平均で約2割、年末比で十数%も上昇した。住宅ローン所得比は、90年代半ばまで2倍ちょっとであったが、2003年末には初めての購入者で2.9倍、買替えの者で2.8倍と3倍近くにまで達している。家計負債の積上がりは、12月と1月の金融政策委員会でたった一人利上げを主張したLarge副総裁が、利上げの根拠に挙げていたものであった。だが、差押えや延滞といった不良債権比率は1992~93年をピークに下がり続けている。

住宅ブームを支えているのは、堅調な景気だけではなく、構造的な要因も大きい。貸す側の金融機関がこのブームを好機と見て、さまざまな新スキームの住宅ローン商品を投入した。より長期的な観点からは、住宅の保有構造の変化が挙げられる。二十年以上前は地方自治体が提供する公営住宅に住む人々が多かった(1984年は全体の34%)。だがその後、サッチャー政権の自治体住宅払下げ政策により減少し、2001年には15%となっている。替わって最も増えたのが住宅ローンによる持家で、1981年31%が2001年には41%となった。

景気要因に加えこうした構造要因もあり、2004年も住宅価格は堅調を続けそうだ。業界関係者の予想を見ると、2004年の上昇率をHalifaxは+8%、Nationwideは+9%など(BBCによる)、昨年よりはペースダウンするものの楽観的に見ている。

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