2025年、デジタルレイバーと共存していくためには

―RPAを現場担当者が上手に活用するポイントを探る―

2018年1月23日

  • 経営コンサルティング第四部 コンサルタント 原田 裕太

1.はじめに
「2025年までに全世界で1億人以上の知的労働者、もしくは3分の1の仕事はデジタルレイバーに置き換わる」 2013年にマッキンゼー・アンド・カンパニーはこんな衝撃的な予測を発表した。(※1)デジタルレイバーは仮想知的労働者とも呼ばれ、ホワイトカラーのパソコン業務を自動化するソフトウェア型ロボットを指している。マッキンゼー社の予測どおりであれば、近い将来、私たちの多くの業務はデジタルレイバーと共に共存していくことになるだろう。ここもと国内に目を向けると、少子化による労働人口の減少や政府主導で働き方改革が加速しており、業務効率化の有効な手段としてRPA(Robotic Process Automation)が注目されてきている。

2.RPAは現場担当者が主導する
RPAは、人間が行っている定型作業を代替するデジタルレイバーであり、その実態は複数のアプリケーションにわたって自動化できるExcelマクロ(※2)のようなものである。RPAにより、人が定型作業に費やす時間を大幅に削減できるのみならず、人的ミスの発生や業務の属人化を防ぐことによって、担当者の業務経験に関係なく、業務を円滑に回すことが可能になると言われる。RPAは従来のシステムと異なり、他のシステムと連携して作業全体を自動化することができ、また、RPAシナリオを作成して、実行するといった仕様になっているため、逐一プログラミングによる作業が必要ないという特徴がある。Excelマクロを使いこなせるレベルの知識があれば、現場担当者でもRPAを実装できるため、現場担当者が主導して業務の自動化を図ることができるのだ。

では、本当に現場担当者だけで、RPAを実装できるのか。筆者は現場担当者という立場で、昨年夏から普段行っている会計計算業務のRPAに取り組んだ。業務は、一部分がシステム化されており、主にExcelとアプリケーションを使用している。RPAを実装したことで、従来1作業におよそ18時間程度要したが、2時間程度まで短縮できる目星がついた。しかしながら、ここまでRPAによる効果を出すためには、様々な障壁があり、都度、工夫が必要であった。

そこで、これからRPAに取り組む現場担当者にむけて、現場担当者である筆者が実際にRPAを実装する上で重要だと思うポイントをまとめてみた。

3.実装のポイントは大きく分けて4つある
筆者が重要だと思うポイントは以下の4つである。

1.RPAによって何を実現したいのかという目標をイメージすること
2.作業手順を可視化すること
3.作業プロセスの見直しを検討すること
4.現場担当者がRPAに馴染むこと

まず、大前提となるのが、RPAによって作業時間を短縮したいのか、人的ミスを防止したいのか、作業コストを削減したいのかなど具体的な目標を立てることである。これを立てないとRPAを実装するプロセスを定めることができないためだ。例えば、既存業務をそのままRPA化した場合、人間が行ってきた作業手順をそのまま自動的に行うだけであり、作業時間の大幅な短縮は望めない。作業時間を短縮したい場合は、RPAの実装と合わせて、作業プロセスそのものを見直す必要が出てくる。実際に構築したものが、期待と異なったものとならないように、予めどのような効果を求めるかを決めておくのが良いだろう。

次に取り上げるポイントは作業手順を可視化することだ。RPAは、現場担当者でも気軽に構築できる一方で、RPAシナリオに忠実に動くロボットである。そのため、普段、人間が無意識に判断して取り組んでいた作業も含めて、全てシナリオに落としていかないと正しいオペレーションができない。また、作業の途中でエラーが発生した場合、人間であればその部分を飛ばして他の作業を行うこともできるが、RPAはエラーのまま止まってしまうか、エラーのまま次の作業に入ってしまい、無効データを大量に生成してしまう可能性もある。作業をエラー処理も含めて、もれなく業務フローチャートに起こし、業務の可視化を図ることをお勧めする。

3つ目は、作業プロセスの見直しを検討することだ。RPAはパソコン上で連続する定型作業を自動化するロボットである。そのため、作業の途中で承認、印刷処理、他部署との対応が必要となるなどのプロセスが存在する場合は、RPAによる効果はさほど期待できない。RPAの業務候補を洗い出すと共に、その業務候補においては、弊害となる作業プロセスの見直しを行う必要がある。その際に、業務の可視化ができていれば、これまで認識していなかった作業プロセスの問題も洗い出され、RPAと合わせて作業プロセスの改善が図れるため、あるべき業務の姿に沿ったRPAの構築が可能となる。

4つ目は、現場担当者がRPAに馴染めるように教育していくことである。既述のとおりRPAは現場担当者が主導して実装できるものだが、現場担当者の中には、これまでシステムというものを避けてきたような方も多いのではないだろうか。今後も広くRPAを業務に浸透させていくには、現場担当者にRPAが手軽なものであることを理解してもらうことが必要不可欠だろう。実際に、筆者も今回RPAに取り組むにあたり知見がなかったため、初めはシステム担当者の協力を仰いで取り組んだ。しかしながら、RPAは予め用意された定型処理の中から選択して並べるだけであり、覚えてしまえば大変簡単なものだ。そのため現在はシステム担当者の協力なしで実装している。社内に部署横断でRPAの実装・メンテナンスを担当する部隊を確保すべきといった意見もあるが、筆者はより多くの現場担当者にRPAの教育を図り、自分たちの業務のために自発的にRPAを構築するような文化を醸成することをお勧めしたい。

4.デジタルレイバーと共存共栄を探る
ここまでRPAの実装ポイントを述べたが、実際にはRPAは発展途上であり、画面レイアウトの変更やセキュリティーパッチが当たったといった外部要因によって簡単に止まってしまい、安定性が課題である。そのため、実装する際は、エラー時にリカバリーできるかをしっかりと検討のうえ、リカバリー体制を整備しておくことを忘れてはならない。すなわち、我々人間はRPAをはじめとするデジタルレイバーが効率的かつエラーせずに稼働し続けるような業務フローを検討していなかければならない。これから、我々の業務に広く浸透してくるだろうデジタルレイバー。我々はデジタルレイバーに業務を奪われるということではなく、デジタルレイバーのメリットとデメリットをしっかり理解して、共存共栄の仕方を探っていくべきであろう。そのためにも、まずは小さな業務でRPAの実装を試してみて、RPAというデジタルレイバーを体験してみてはいかがだろうか。

(※1)McKinsey Global Institute “Disruptive technologies: Advances that will transform life, business, and the global economy” May 2013
(※2)Microsoft社が開発・販売している表計算ソフトExcelに標準装備されている、複数の手順を 記憶して、自動的に実行させる機能

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