「2017年の欧州の政治リスク」を振り返る

2017年11月16日

2017年の欧州のリスクとして「政治の不安定化」が注目された。2016年は周知の通り、6月に英国が国民投票でEU離脱を選択し、11月には米国の大統領選挙でトランプ氏が選出される番狂わせがあった。これらの結果が番狂わせと受け止められたのは、欧州統合、自由貿易、移民労働者の受け入れなど、経済活性化に寄与すると積極的に推進されてきた政策を、真っ向から否定する主張が少なからぬ有権者に支持されたためである。英国以外の欧州諸国でも既存の政策に異を唱える政党の台頭が目立つ中、2017年はオランダ、フランス、ドイツという欧州主要国の国政選挙が相次ぐ予定になっていた。

2017年が残り1カ月半となったところで振り返ると、懸念されたような政治の番狂わせの連鎖は起きなかったと総括できる。EU離脱や反移民を主張する政党は各国で得票を伸ばしたものの、政権を担うには至っていない。オランダの議会選挙で、自由党は世論調査が示唆していた第1党ではなく第2党にとどまった。フランスの大統領選挙では、国民戦線のルペン候補が決選投票に進んだが、親EUを前面に打ち出したマクロン候補との一騎打ちに敗れた。マクロン大統領はその余勢を駆って6月の議会選挙でも過半数の議席を獲得した。ドイツではAfD(ドイツのための選択肢)が初めて国会に議席を獲得したが、連立政権交渉からは除外されている。

以上の選挙結果をもって、欧州の政治リスクは沈静し、EUの求心力が回復されたと判断して良いだろうか。確かに英国以外のEU加盟国でEU離脱は多数派となってはいない。英国のEU離脱交渉が遅滞していること、過去1年余り英国経済の先行き不透明感が高まっている一方、大陸欧州が景気好調であることが背景にあろう。加えて、英国はもともとEUの統合深化に懐疑的な国だったという事情もある。

ただし、EUの求心力を脅かす材料がなくなったわけではない。EUとして難民・移民をどのように受け入れるのか、市民が不安を抱く治安維持やテロ対策の実効性をどう上げるかなど課題は積み残されている。EUの難民政策を特に強く批判してきたのがハンガリーとポーランドで、この問題はEU内で東西対立の様相を呈するが、オーストリアでは10月の議会選挙で東欧諸国の主張に理解を示す政権が誕生する可能性が高まっている。また、EU各国の失業率の格差が示唆するように、景気回復を実感できていないEU市民が少なからず存在する。雇用改善が遅れているのはギリシャ、スペイン、イタリアなど債務危機に苦しんだ南欧諸国で、EUにはこの南北格差の是正で成果を上げることが求められるが、英国のEU離脱に伴うEU予算の縮小がこの課題を一層難しくする可能性が出てきた。

つまるところ、欧州の政治リスクにつながりかねない原因はさまざまあり、2018年もその解決に向けた取り組みの手を緩めてはならないということである。なお、2018年8月にはギリシャに対するEUの財政支援が期限切れを迎える。ギリシャの債務負担は非常に大きく、継続的な支援が必要と考えられるが、過去の3度の支援協議が非常に難航したことを思い起こせば、EUに対する不満や不信感を再燃させるきっかけになりうるだろう。

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