約20年ぶりの北京

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2017年11月15日

  • 土屋 貴裕

先般、1996年以来の北京訪問の機会を得た。

第一歩となる空港からして清潔で、多くのものが劇的に変わっていた。道路に大量のごみが散乱していることはなく、自転車ではなく車で渋滞している。高級車も普通に走っていて、ドイツ車が目立っていたように思う。日本と異なるのは、電動自転車、電動バイク、小型電気自動車が走っていることで、将来的にエンジンを積んだ自動車を禁止する流れはすでに始まっている。日本でもサービスが始まった自転車シェアも電動自転車が導入されていて、GPSで位置を把握しているらしいのだが、それでも乗り捨てし放題なので、充電は大変だろうと心配になった。

移動に使ったカー・シェアの専門ドライバーはよく訓練されており、快適なドライブで、近代的な変わった形のビルや、欧米の企業が数多く進出しているのを見かけた。むしろ古い街並みを積極的に保存する必要性に迫られている。野暮ったいが安くて中国各地の味を楽しめた屋台は消えていて、ほとんど見かけることはない。どうやらデリバリーに転換したか、スーパーなどの中に収まっているようだ。スーパーでは、日本でも見かけるアメリカのブランドが並び、レジ袋がしっかりしたものになっていたのは助かった。

日本の商品は、あちこちで見かけたコンビニに数多く陳列されていた。おにぎり、おでん、お菓子、マヨネーズなど、その名の通りコンビニエンスである。こうした店舗におけるスマホ決済は見ていてとても便利そうだ。電子マネーと異なり、「読み取り作業」はお金を支払う側のスマホである。受け取る側は、支払者に読み取ってもらうQRコード1枚を準備すればよく、導入コストはほぼかからない。かつては、クレジットカードが使えるのは限られた一部のお店だけで、破れていたりしわくちゃだったりした紙幣を束にして決済していたが、今や現金決済は一部の年配の方などと観光客だけで、少数派だろう。

2016年の世界の名目GDPに占める中国のシェアは15%で、すでに日本の倍以上である。北京の人は若い人を中心におしゃれで、スマホだけで財布は要らない世界になりつつあり、沿海部だけなら先進国並み、という話はそうかもしれない。一方で、人民服を着てリアカーで練炭を運ぶ姿を見かけることはなかったが、一人当たりGDPは日本の5分の1程度と低い。地方からの「おのぼりさん」っぽい人たちはパッとしない雰囲気で、貧しい身なりの出稼ぎ労働者風の人もいた。謎の行列など非効率と思える部分も多々あって、だが改善余地とは成長余地と同じだろう。見てみないとわからないこともあるものだ。

ただ、やっぱり人はとても多い。

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