復興需要のその先

2017年10月18日

  • ニューヨークリサーチセンター エコノミスト 橋本 政彦

今年の8月、9月にアメリカ南部を襲った大型ハリケーン・ハービー、イルマは甚大な被害を及ぼした。具体的な被害総額はまだ把握されていないが、テキサス州のアボット知事は、ハービーによる被害は過去最大級の被害を及ぼした2005年のカトリーナを上回るとの見解を示している。

言うまでもなく、こうしたハリケーンの襲来は経済活動にもマイナスの影響を与えた。テキサス州に工場が集中する、石油製品工業や化学製品工業では生産が一時的に大きく落ち込み、サプライチェーンにも影響を与えたため、広く生産活動を押し下げた。また、供給減による素材価格の上昇は、企業収益を圧迫する要因になったとみられる。ハリケーンによる悪影響は被害地域のみにとどまらず、全米に波及することになった。

その一方で、被害からの復旧・復興需要が顕在化し始めている。例えば、2017年に入ってから減少傾向が続いていた自動車販売台数は、2017年9月には前月比+15%と大幅に増加し、2005年7月以来の高水準を記録した。ハリケーンを取り巻く話題は、復旧・復興需要による経済の押し上げへと視点が移りつつある。

しかし、もう少し長いタイムスパンでは、復旧・復興需要による副作用についても考慮しておく必要があろう。復旧・復興需要とは、災害によって毀損したストックの復元であるが、これは将来に実現するはずであった、ストックの更新需要を先食いしているのに他ならない。ハリケーンという不測の事態によって、強制的に住宅や、自動車などの耐久財、機械設備の更新を迫られることで、復旧・復興が一段落した後は、しばらく投資の必要性がなくなる。

加えて、政府による支援や保険があるとは言え、そうした買い換え、更新投資にかかる費用の一部は被災者が負担する必要がある。そもそもハリケーンによる被害が多い南部の地域では、保険料が高いため、保険に加入していない人も多いという。報道によれば、ハービーによる被害を受けた地域の家計のうち、連邦政府による洪水保険に加入している割合は、全体のたった6分の1にとどまるとも伝えられている。保険に加入していないからといって生活に必要な住宅や自動車の補修・買い換え、更新を見送るわけにもいかないため、多くの世帯は借り入れに頼らざるを得ないと考えられる。予期せぬ債務、返済負担の増加は、将来の家計支出を抑制する要因になり得るだろう。

ハリケーン被害による影響は、物的な被害が修復された後も、長期にわたって継続すると考えられる。被災地域が早期に復旧・復興するための迅速な対応も重要だが、より長い視野での支援も政府には求められるのではないか。

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