「パリピ」が景気を動かす?

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2017年09月04日

  • 前田 和馬

内閣府「景気ウォッチャー調査」は、タクシー運転手やスーパーの店長などの「景気に敏感な人々」が、景気の現状を「良い」から「悪い」の5段階で評価したものである。この評価から算出される現状判断DIは「街角景気」とも呼ばれ、株価との相関が観察されることから、市場関係者からの注目度が高い。

また、同調査の景気判断理由集(現状)は、イベントと景気の関係性を知る上で興味深い。例えば、広島カープがリーグ優勝した昨年秋、地元プロ野球チームの優勝が景気を上向かせているとのコメントが、中国地方で多く見られる。一方、2015年にサンフレッチェ広島がJ1優勝した際には、地元サッカーチームに言及するコメントは見られない。地元への経済効果という観点では、両者には格差があるように思える(※1)

景気ウォッチャー調査の毎月のコメント数は千を超えており、それが積み重なると膨大なデータとなる。昨今、こうした大量のテキストデータを、経済分析や経済予測に活用する動きが出てきている(※2)。AIを用いれば、上記のように野球とサッカーで、景気に与える影響度の違いをより詳しく分析することもできよう。

こうしたニーズを背景として、今年5月、内閣府は頻出用語等の表記を統一した(※3)。以下はその例だ。

・「パーティ」→「パーティー」に統一
・「ハロウィン」→「ハロウィーン」に統一

表記を統一するほどなので、これらのワードはコメントの中によく登場するのかと思ったが、「クリスマス」や「宴会」といったワードと比べると登場数は少ない。もちろん、あくまでコメント中の登場数であるため、景気への影響を測るには詳細な分析が必要となろう。ただ、将来的にこれらのワードの登場数が増え、AI等を活用した分析を行えば、「ハロウィーンとパーティーの効果が、景気を押し上げている」や「パーティーの開催数が景気の先行指標である」といった事実が浮かび上がる可能性もある。

ちなみに、タイトルにある「パリピ」は“Party People”の略であり、イベント・パーティー・クラブ等が大好きな、テンション高めな人々を指す若者言葉である。近年のハロウィーンの普及・拡大も、パリピの存在が大きな影響を及ぼしている。ある景気ウォッチャーは以下のようにコメントしている。

「ハロウィーンで仮装して浮かれている若者たちをみると、景気が上向きであるような雰囲気が醸し出されている。景気の動きは、雰囲気が大きく作用する。」
(2015年10月、東海、企業広告制作業(経営者))

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(※1)中国電力エネルギア総合研究所は、優勝セール・パレード等の経済効果を、2016年の広島カープで41億円、2015年のサンフレッチェ広島で8億円と試算している。
http://www.energia.co.jp/press/2016/9590.html
http://www.energia.co.jp/eneso/keizai/research/pdf/MR1605-2.pdf
(※2)大和証券グループでは、同調査の約7万行のデータからモデルを構築し、地域別の景況感を示した「大和地域AI(地域愛)インデックス」を今年7月に公表した。
(※3)内閣府「『景気ウォッチャー調査』における景気判断理由表記の遡及改定について」(平成29年5月11日、内閣府政策統括官(地域財政分析担当)付参事官(地域担当))

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