ほとんどの年金生活者は配当・分配金の税率を5%にできる

所得税は総合課税・住民税は申告不要という課税方式

2017年7月25日

2017年度の証券・金融関連の税制改正のうちメディアに多く取り上げられたのは「つみたてNISAの創設」であるが、個人投資家にとって重要な改正がもう1つ行われている。それが、「上場株式等の所得の住民税の課税方式の実質見直し」である。

上場株式の配当や公募株式投信の分配金の課税方式は、申告分離課税・申告不要・総合課税の3種類あるが、2017年度の税制改正によって、これらの3つの課税方式を所得税と住民税でそれぞれ任意に選べることが明確化された(※1)

これにより、「所得税は総合課税・住民税は申告不要」という課税方式を選べば、ほとんどの年金生活者にとって上場株式の配当や公募株式投信の分配金にかかる正味税率を5%まで引き下げることが可能になった(※2)。ある程度の退職金を受け取っており、NISAの非課税枠(年間120万円・5年累計で600万円)を上回る投資ができる年金生活者にとって朗報と言えるだろう。

これまでも、年金生活者においては、配当や分配金につき確定申告を行い(所得税・住民税ともに)課税方式を総合課税にすると税率が申告不要制度における20.315%より下がることがあった。ただし、その代わり確定申告を行うとこれらの配当金や分配金が国民健康保険料や後期高齢者医療制度の保険料の賦課対象となる所得に含まれ、これらの保険料が増加するという問題があった。

実は、国民健康保険料や後期高齢者医療制度の保険料を判定する上での所得とは所得税の所得ではなく住民税の所得である。このため、「所得税は総合課税・住民税は申告不要」という課税方式を選択すれば、国民健康保険料や後期高齢者医療制度の保険料への影響を気にすることなく、所得税の総合課税適用による配当や分配金の税率引き下げの恩恵を受けられるのである。

ただし、この恩恵を受けるための手続きはちょっと複雑だ。所得税の確定申告書を税務署に提出するのみならず、別途、住民税の申告書を作成して市区町村の窓口に提出しなければならない。

(※1)上場株式等の譲渡所得等および利子所得の課税方式についても、申告分離課税と申告不要のいずれかを所得税と住民税でそれぞれ任意に選べることが明確化されたが、本コラムでは割愛する。
(※2)上場株式の配当や公募株式投信の正味税率を5%(所得税は配当控除により実質0%、住民税は5%)とするための条件は、下記の①と②の両方を満たす必要がある。
①納税者の課税所得金額が195万円以下であること。
②国内上場株式の配当、日本株ETFの分配金、国内公募株式投信(組入資産の外貨建割合と非株式割合がともに50%以下の国内公募株式投資信託のものに限る)の分配金、のいずれかに該当する配当・分配金であること。
収入が公的年金のみである65歳以上の年金生活者については、年金額が年353万円以下であれば上記①の条件を満たす。老齢厚生年金受給者の99%以上は年金額が年353万円以下である(厚生労働省「平成26年度 厚生年金保険・国民年金事業年報」より)ため、ほとんどの年金生活者は上記①の条件を満たすものと考えられる。
(※3)制度の詳細は、「2017年度改正税法のポイント(個人編)」(是枝俊悟・小林章子、2017年6月7日)を参照。
http://www.dir.co.jp/research/report/law-research/tax/20170607_012050.html

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