西日本で深刻化する子どもの貧困

2017年7月5日

6月27日に公表された厚生労働省「国民生活基礎調査」によると、最新(2015年)の子どもの貧困率は13.9%となり、3年前の前回調査(2012年)の16.3%から2.4%ptも低下したことが分かった。これまで6人に1人の子どもが貧困であると言われてきたが、最新調査では7人に1人の割合まで改善したことになる。2012年末に安倍政権へ移行後、景気回復の効果が子どもの貧困を減らしている。

しかしながら、足元の事態は必ずしも楽観的とは言えない。というのは、子どもの貧困につながりやすい、ひとり親世帯(特にシングルマザー)における子どもの貧困率がいまだに50%を超えており(2人に1人!)、その状況は引き続き深刻だからである。

図表1は、都道府県別のひとり親世帯の割合と就学援助率の関係を見たものである。就学援助率とは、全国の公立小中学生のうち経済状況が厳しい家庭に給食費や学用品代を補助している児童の割合を指しており、子どもの貧困状態を把握できる。すると、ひとり親世帯の割合が上昇すると就学援助率も上昇しやすいことが分かる(※1)。図表1より高知や大阪などの西日本で就学援助率が高い傾向がある。

実はこのひとり親世帯の割合は全国的に上昇しているのだが、特に近年は西日本で急上昇しているのである。図表2は児童のいる世帯数のうちひとり親世帯数の割合を見たものだが、2016年(以下同じ)に高知は12.7%と全国で最高となっており、続いて福岡が10.7%、沖縄が10.3%、大阪と宮崎が9.4%、和歌山が9.2%と、2001年と比べて西日本でその割合が高まっている。

もちろん、ひとり親世帯が直接貧困につながるわけではないが、例えば離婚後に親権を持つことが多い女性が就労しても、男性と比べて女性の賃金は総じて低いため、シングルマザーの家庭の子どもは貧困に陥りやすいのである。元夫から振り込まれる養育費の支払いや児童扶養手当もあるが、それらでは足りない場合も多いと聞く。そのため、ひとり親世帯が増えている高知などの西日本では、女性に多い非正規雇用の待遇改善等が進まなければ、今後さらに子どもの貧困問題が深刻になることが予想される。また、二人親世帯でも両方とも非正規雇用の場合には子どもの貧困は深刻となり、やはり就労条件の改善が急務だ。

子どもの貧困は、子どもから教育を受ける機会を奪い、次世代へ貧困の連鎖を生む。さらに日本経済の生産性向上が最優先課題となる中、子どもの人的資本の形成機会が十分に行われないとイノベーションにマイナスとなるし、将来の税収減や社会保障費の増加も伴うなど、社会全体にも継続的な悪影響を及ぼし続ける。

2013年に政府は「子どもの貧困対策法(子どもの貧困対策の推進に関する法律)」を成立、2014年には「子どもの貧困対策に関する大綱」で具体的施策を策定した。今回の数値の改善自体は望ましいが、これで今後の子どもの貧困対策が後退することのないよう、進捗状況を見守りたい。

ひとり親世帯の割合と就学援助率
都道府県別に見たひとり親世帯の割合

(※1)就学援助率の支給基準については、準要保護児童生徒の認定が各市町村教育委員会の基準によるため、その違いによる影響もあることに注意されたい。

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