プレミアムフライデーが普及すると何が起こるのか?

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2017年04月27日

明日4月28日の金曜日、3回目のプレミアムフライデーがやってくる。プレミアムフライデーとは月末金曜日の仕事を午後3時と早めに終えて、増えた余暇時間を有効に活用してもらおうとするものである。長時間労働是正の一つのきっかけとなることや、土日と繋げて旅行に出かけるなどの消費喚起の効果も期待されており、再びその動きが注目される。

ただし、プレミアムフライデーを実施する企業が全体でまだ少ないこともあり、その経済全体への効果は現時点では限られている。今後、プレミアムフライデーの拡大が見込まれた場合、人々にどのような行動変化が期待できるのだろうか。

総務省が5年毎に公表している「社会生活基本調査」には、人々の1日の行動を15分単位の時間帯に分けて、ある特定の行動をしている人々の割合(これを行動者率と呼ぶ)を示すデータがある。例えば、平日の有業者について男女別に見た時間帯毎の行動パターンを特定することが可能である。

直近のデータを見ると、人々は仕事の終わる夕方5時~6時頃から食事をするのは当然として、男女共に夕方以降は、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌に費やす時間や休養・くつろぎ、身の回りの用事に費やす時間が増えているのが分かる。また割合は多くないが、男女共に夕方以降は職場の同僚や友人と飲みに行ったり、スポーツジムに通ったりする人々も増える傾向にある。

平日の有業者で男女によって明確に分かれるのは、家事労働(介護・看護や育児も含む)と買い物の時間だ。女性の場合、パートタイム労働者が多いことが影響していると思われるが、午後3時から午後7時頃にかけて家事労働と買い物に費やす人々の割合が増えている。一方、フルタイムで働く割合の多い男性ではそれらの行動を取る人々は少なく、比較的多いのが平日の夜に趣味・娯楽に時間を投じる男性が一定割合いることだ。

したがって、プレミアムフライデーで終業時間が午後3時となり2~3時間前倒しになると、これらの行動の大半も前倒しになることが予想され、その行動パターンは男女間で異なる可能性が考えられる。女性は増えた余暇時間を家事労働や買い物に費やす人々が増える一方で、男性ではテレビを見たりくつろいだり、趣味や娯楽に費やす可能性が高いのではないだろうか。プレミアムフライデーの影響を大きく受けるのはフルタイム中心の男性であると考えると、プレミアムフライデーで早い時間に仕事が終わっても、買い物を通じた消費喚起の効果はそれほど期待できないかもしれない。

もちろん、同じ統計で示されるように、平日の夕方以降は特に男性でインターネットの利用者の割合が増える傾向にあり、男性でもネットショッピングなどの形で消費を増やす可能性はある。さらに、男性で夕方以降の行動者率が高い休養・くつろぎ等に関連するサービスでは消費が喚起される可能性がある。プレミアムフライデーによるビジネスチャンスをつかむには、こうした属性により異なる行動パターンを踏まえたビジネス戦略が必要となるだろう。

各時間帯における余暇行動の行動者率(平日・有業者・2011年、左:男性、右:女性)

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溝端 幹雄
執筆者紹介

経済調査部

主任研究員 溝端 幹雄