サービス向上よりも賃上げによる消費喚起に期待

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2017年03月21日

  • 岡本 佳佑

先日、保育園の卒園を控える息子と、その友人の親子5組で、ボウリング大会を行った。子ども用のレーンにはガターがなく、最後にはボウリング場からお菓子のプレゼントもあった。その後はボウリング大会の慰労会と称して、居酒屋に移動(「子どもを居酒屋に連れて行くなんて…」と思うかもしれないが、保育園の友人と遊べるのもあとわずかと考え、特別に連れて行った)。その居酒屋には“お子様メニュー”があり、さらに帰りにはお菓子とおもちゃのプレゼントまで用意してあった。これらのサービスに対して子どもたちが満足したのは言うまでもない。翌日の朝、息子が楽しそうにボウリングやお子様メニューのことを話しているのを見て、また連れて行こうかという気持ちになった。

企業は子どもの興味をひくサービスを提供して消費を促すなどのアイデアを考え、より良いサービスを提供して集客に取り組み、少しでも自社の売上を拡大させようと努力している。ほかにも、子どもに関連した企業のアイデアとしては、三世代が集まりやすいお盆の時期にランドセル商戦を設定し、孫向けの支出には甘い祖父母に高品質・高価格帯のランドセルを販売する戦略などが挙げられるだろう。

こうした企業努力にもかかわらず、消費の停滞が続いている。できることなら消費をしたい。しかし、先立つものがないので簡単に財布の紐を緩められない。これが家計の本音の一つであろう。このように冷え切った家計の消費マインドを温めるためには、所得環境を改善させていくことが必要条件だ。

しかし、先行きの所得環境の改善は見込み難い。2017年の春闘で、連合はベースアップを要求した。対する企業側は、将来的な業績への重石となることへの懸念から賃上げには消極的で、2017年の主要企業の賃上げ率は前年を下回る水準になりそうだ。一方、2016年10-12月期法人企業統計を見ると、全産業(金融業、保険業を除く)の経常利益は過去最高を更新している。少なくとも足下の企業業績だけを見れば、企業に賃上げする体力がないとは言えないだろう。現在では、生鮮食品の値上がりやエネルギー価格の上昇などを背景に、すでに消費者物価が上昇し始めている。賃上げが進まないようであれば、購買力の低下を通じて、先行きの消費は拡大するどころか、縮小する可能性すらある。

サービスの向上による集客ももちろん大切であるが、それではパイが広がらない。企業には高水準の利益を原資とした給与引き上げというかたちでの消費喚起にも注力してもらえれば、消費拡大機運も高まることだろう。

いち消費者、いちエコノミストとして、賃上げへの期待は強まるばかりだ。

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