企業が「顔採用」を行うべきでない理由

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2017年03月13日

  • 前田 和馬

3月から会社説明会が解禁され、2018年入社予定の新卒採用がスタートした。街中でリクルートスーツを見かける機会は増えたが、毎年のことながら、似たような見た目の若者が急激に現れだすことに多少の違和感を抱く。

もちろん、面接の第一印象では見た目が重要である。清潔感に加えて、生まれ持った容姿の良さも一定程度の影響はあるだろう。「容姿以外が同じ評価であれば、容姿の良い方を採用する」というのはよく言われる。ただ、実際にそうであったとしても、これが本当に企業の合理的な判断だろうか?

『美貌格差:生まれつき不平等の経済学』(※1)には、美形がいかに人生で得をしているかがまとめられている。例えばアメリカでは、その他の特徴が全く同じ場合、容姿が上位3分の1であれば収入は5%ほど多く、逆に下位7分の1だと収入は約10%少なくなる。ここから「容姿の良い学生の方が、入社後に活躍できそう」と面接官が判断するのは、あながち間違ったことではないだろう。

しかし、応募者の能力や適性を「純粋に」評価したと思っても、その結果は完全に容姿と無関係なのだろうか?つまり、容姿が良いことにより、論理的思考力やコミュニケーション能力を面接官が過大評価する可能性は否定できない。「イケメンだから頭の回転が良さそう」とか「美人だから社交的で協調性がありそう」といった具合に。

仮にこのような傾向(バイアス)があるならば、面接における「容姿以外は同じ評価」を鵜呑みにはできない。同じ評価の美形とそうでない候補者がいた場合、容姿のプラス分を差し引けば、より優秀なのは容姿が悪い方である。WEBテストや筆記試験の結果は容姿に左右されることはないが、面接において同じ評価の場合には「逆顔採用」を行うのが企業として合理的だ。

ただ、実際に「逆顔採用」の導入を考えると、社内の雰囲気や企業イメージに何らかの影響を及ぼす可能性があるため、実行に移すのは簡単ではないだろう。

前述の書籍に、美しい人はお金を借りやすく借入金利も低いが、債務不履行を起こす可能性が高いという話がある。「貸し手は単純に、美しい借り手にお金を貸すほうが好きだ」と著者は述べる。理論的な合理性が無くとも、「容姿以外が同じ評価なら、好きか嫌いかで選ぶ」という採用基準は、面接官にとっては納得感があるのは間違いない。

(※1)ダニエル・S.・ハマーメッシュ(著)、望月衛(訳)、東洋経済新報社

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