女性の職業選択は医師がお得

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2017年03月07日

  • 亀井 亜希子

内閣府男女共同参画局は、「社会のあらゆる分野において、2020年までに、指導的地位(※1)に女性が占める割合が、少なくとも30%程度になるよう期待する」という目標を2003年から掲げ、女性の参画を推進している。内閣府により「指導的地位」と定義される22職種について、直近(2012年時点)の在職者の女性比率を見ると、ほとんどの職種で目標値の30%を下回っている(※2)

実際に「指導的地位」への女性参画がどの程度進んできているのかを見るため、1996~2016年において、「指導的地位」の中の主な7職種の「新規入職者数に占める女性比率」の推移を見た(図参照)。直近データ(「大卒総合職(主に大企業)」は2014年、それ以外は2016年)の同比率が30%を上回っているのは、「医師」(32.8%)、「歯科医師」(40.0%)、「薬剤師」(60.7%)の医療職である。それ以外の「弁護士」(21.2%)、「公認会計士」(21.3%)、「大卒総合職(主に大企業)」(22.2%)「国家公務員(Ⅰ種・総合職)」(25.2%)の同比率は、30%に達していない。

特に、同比率が2000年から30%を超えている「医師」は、女性が比較的就きやすい職種といえよう。「医師」は、平均年収の低下も「歯科医師」・「薬剤師」に比べて緩やかであり(※3)、医学部定員数は2008~19年度において増加措置が取られている。2020年度以降については、医師数の需給予測や地域偏在状況により、抑制か増加かは現段階では議論が分かれているが、過去の医学部定員数の傾向から、抑制されるとしても最低でも毎年7,500人程度は安定的に確保されていくと考えられる。現状、仕事で活躍したい女性にとっては、「医師」という職業は、自己投資に費やした努力や学費に対するパフォーマンス(その職種への就きやすさ・昇進・就職後のQOL(生活の質))に優れている職業と考えられよう。

子供がなりたい職業、親が子供に就いてほしい職業に、ここ数年、男女共に、医師が上位にランクインしている。これは、メディアで医療系ドラマや健康番組等が増加傾向にあり、子供たちも医師の働き方を知る機会が増えていることや、景気の影響を受けにくく平均所得が高い職業に就かせてやりたいという親心の表れだろう。

今後は、政府方針に基づき、様々な分野の指導的地位においても、女性比率は目標の30%程度へと上昇していくことが見込まれ、女性活躍がさらに進んでいくことが期待される。教育熱心なご家庭では、女の子の場合には、女性にとってお得感のある「医師」という職業を、選択肢の一つとして勧めてみてはどうだろうか。

日本医師会 女性医師支援センター「医師国家試験合格者数の推移(性別)」

(注)歯科医師・医師・国家公務員(Ⅰ種・総合職)・公認会計士・薬剤師は各国家試験合格者数、弁護士は司法修習修了者数、大卒総合職(主に大企業)は主に従業員300人以上の企業の大卒総合職採用者数、の各女性比率である。(出所)日本医師会、歯科医師の資質向上等に関する検討会、医道審議会歯科医師分科会、日本弁護士連合会、人事院、金融庁、厚生労働省の各種資料データより大和総研作成

(※1)「(1)議会議員、(2)法人・団体等における課長相当職以上の者、(3)専門的・技術的な職業のうち特に専門性が高い職業に従事する者とする。」(平成19年男女共同参画会議決定)
(※2)内閣府男女共同参画局「各分野における『指導的地位』等に占める女性の割合」
(※3)厚生労働省「賃金構造基本統計調査」

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