穴八幡宮の御守

2017年1月10日

2017年になって10日が経った。そろそろ正月気分が抜ける頃かもしれない。毎年我が家は正月になると、東京・西早稲田にある穴八幡宮に参拝するのが決まりとなっている。

穴八幡宮といえば、一陽来復(いちようらいふく)の御守が有名だ。一陽来復とは、陰暦10月に陰が極まって冬至に陽が生じることから、冬が終わって春が来ること、悪いことが終わって物事が良い方向に向かうことを意味する言葉だ。冬至、大晦日、もしくは節分の日の夜中12時に指定された方角(恵方)に向けて、一陽来復の御守を自宅の部屋のできるだけ高い位置に貼ると、1年間は金銀融通(金運)に恵まれるとされる。毎年御守を授かるために、遠方からわざわざ穴八幡宮にお参りに訪れる人も多い。

私自身の金運については読者のご想像にお任せするが、国の金運(経済成長)については政策の方向性が重要だろう。米トランプ次期大統領のインフラ事業に期待するのも良いが、持続的な経済成長を実現するには、やはり国内でビジネスをしやすい環境を整えることが重要だ。ベンチャー企業や外国企業が市場に参入して既存の企業を適度に刺激するような健全な財・サービス市場、資本市場があり、女性、高齢者、外国人等が適材適所で活躍できる労働市場に加えて、企業や個人の努力が生産的な活動へ向けられる簡素で公平なルールに基づいた経済環境が必要となる。

しかし現実を眺めると、企業や個人の力関係で結果が決まってしまう環境は数多く見られる。暗黙的な商慣行は新たな企業の参入を阻む。既成概念に捕らわれた声の大きな年長者が若者の画期的なアイディアを抑え込む。従来の人事評価は多くの有能な女性を引き留められない。煩雑な行政手続きは新しいアイディアを持ち込むベンチャー企業や外国企業にとって大きな負担だ。こうした交渉力の弱い企業や個人が排除される仕組みが各種制度にあると生産性を大きく引き下げる。これでは決して健全な経済環境とは言えない。

ルールに基づく市場制度の徹底は、交渉力の弱い経済的・社会的弱者に対してもフェアに扱うための仕組みを構築するという目的がある。IoTやAIを経済成長につなげるには新しい発想を市場に取り込む必要があるが、往々にしてそうした発想を持つ企業や個人は弱い立場にあるので、彼らが活躍できるフェアな市場制度が不可欠だ。一方、ルールに基づく市場制度は企業や個人の努力が欠かせないため、政府は行政手続きを含む各種規制の整理・統合や生涯を通じた教育制度の充実といった、努力を積極的に支援する体制も整えるべきだろう。そして判断材料となる情報の開示も極めて重要である。

アベノミクスが本格的に始動して今年で5年目を迎えるが、持続的な回復にはまだやるべきことは多い。もし国の政策を的確に“恵方”に向けることができれば、日本にも本格的な“一陽来復”が訪れる日も近いだろう。

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