ママチャリは少子化の象徴?

2016年10月3日

国内の乗用車の普及率(二人以上の世帯)は、1995年に80.0%に達して以降、それを下回ることはなく、高い普及率を維持している(※1)。ただし、都道府県別に見ると、東京の普及率の低さが目立つ。「平成26年全国消費実態調査」(総務省統計局)によると、2014年の全国の自動車普及率が二人以上の世帯のうち勤労者世帯では88.7%であるのに対し、東京では60.9%にとどまる。

その背景には、東京では交通網が発達しているため、車の必要性をあまり感じないということもあるだろうが(※2)、維持管理費が高額なことも影響しているだろう。自宅に駐車スペースが確保できない場合は、外部の駐車場を利用することになり、その賃料は周辺地価が大きく影響する。

近年は、カーシェアリングのステーション(シェアカーが止まっている駐車場)や台数も増加し、個人で車を保有せず、必要なときにのみ利用する人も増えているようだ。しかし、その都度予約をして、何らかの手段でステーションまで向かわなくてはならないなど、日々の移動手段としての利便性はあまり高くないだろう。

東京(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)では車の普及率が低い一方、電動アシスト自転車の普及率が高い(※3)。電動アシスト自転車とは、充電式のバッテリーを搭載した自転車のことであるが、多くはいわゆる「ママチャリ」として知られている。子どもや重い荷物を乗せても、電動機(モーター)が補助してくれるため、上り坂でも容易に進む。保育園の送迎や子どもを連れての買い物など、手をつないでゆっくりと歩く時間のないような働く親にとっては、車に代わる頼もしい手段と言えよう。

現在、この電動アシスト自転車が利用できるのは、大人1人と子ども2人までと、ルール上は合計3人までになっている(※4)。しかし、前後のチャイルドシートに2人の子どもを乗せてしまうと荷物カゴの部分がなくなる。左右のハンドルやチャイルドシートの後部に大量の荷物をぶら下げるという対応も考えられるが、これらはバランスを崩しやすく大変危険である。つまり、大量の荷物と共に安全に乗車するには、実は、子どもは1人までということになる。シーツや着替えなどの荷物が多い保育園児が2人以上いる場合は(※5)、自転車よりも車を利用する方がやはり望ましいのかもしれない。

東京では、1世帯あたりの子ども数が全国で最も少ないために(※6)、電動アシスト自転車の普及率が高いのか。または、車を所有する困難さが、出生数の抑制に影響するのか(※7)。実際のところはよくわからないが、それぞれはある程度の相関があるようだ。

勤務前後の慌ただしい日常に、保育園への送迎が組み込まれる共働き世帯にとっては、短時間で大量の荷物と共に子どもを運搬できる手段は必須だろう。子どもとゆっくり歩く時間が惜しまれるような現状では、ともすれば車を所有できないことが少子化の一因ともなりかねない。

(※1)内閣府「消費動向調査」の「主要耐久消費財等の普及率」(二人以上の世帯)
(※2)内閣府「住生活に関する世論調査」(平成27年10月調査)によると、「住宅,立地・周辺環境で最も重視すること」に、「立地の利便性(通勤・通学に便利な立地や、公共交通機関、医療・介護・福祉施設、日常的な買い物施設等へのアクセスの良さ)」を挙げる割合が、「東京都区部」在住者に特に多い。
(※3)2014年の全国の普及率は9.1%だが、東京の普及率は19.8%(総務省統計局「平成26年全国消費実態調査」(二人以上の世帯のうち勤労者世帯))。
(※4)平成21年7月に道路交通規則が一部改正され、自転車の仕様等の条件を満たせば、幼児を2人まで乗せることができるようになった。警察庁における「幼児2人同乗用自転車」に求められる要件及び解説(要件に対応した具体的な基準及び評価方法等)を満たした幼児2人同乗用自転車を対象に、一般社団法人自転車協会が「幼児2人同乗基準適合車マーク」を貼付している。
(※5)子どもの年齢が離れていれば、同時に乗車させる機会は減るが、6割の夫婦は第1子出生から第2子出生までの間隔が3年以内である(国立社会保障・人口問題研究所「第14回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」(2010年))。
(※6)2013年時点で東京の児童のいる世帯の平均児童数は1.59人、全国では同1.70人(厚生労働省「平成25年 国民生活基礎調査」)。
(※7)東京の平成27年の合計特殊出生率は1.17と全国で最も低い(厚生労働省「平成27年人口動態統計月報年計(概数)の概況」)。

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