「モノ、サービス、カネ」のシェアリングエコノミー

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2016年09月06日

  • 経済調査部 市川 拓也

内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室長の下で開催されているシェアリングエコノミー検討会議(※1)では、今秋の取りまとめに向け、自主規制策等の議論が行われている。同会議ではシェアリングエコノミー関係者のヒアリング等が行われ、議事要旨や資料からは、事業者(B)と消費者(C)が相互に入れ替わる等の特徴を有するシェアリングエコノミーの現状を垣間見ることができる。自家用車の相乗りや、子守りのシェアなど、実にさまざまなタイプがある。シェアリングエコノミーに関連する新たな事業は、今後まだまだ拡大するものとみられる。

多面的な広がりを見せるシェアリングエコノミーの中でも、イメージしやすい事業形態としては「モノ」のシェアがある。保有する車(※2)などのモノを利用していない間に貸し出す行為は以前から可能であったが、スマートフォン等の普及によりインターネットサイトを介した短期間での利用や消費者の事業者としての参入が格段に容易になった。こうした要因を背景にした新たな事業群がシェアリングエコノミーの範疇といえよう。

「サービス」のシェアは、モノに比べてイメージしにくいが、基本的にはサービス提供者の空いている時間に利用者が家事代行などのサービスを受けることで成り立つ。シェアリングエコノミーの観点からは、インターネットサイトを介すことで瞬時に短時間の利用が可能となる点が特徴といえよう。さらに、特定の事業に複数の資金提供者から「カネ」を集めるクラウドファンディングのような場合もシェアリングエコノミーと言えるようである。

狭義で捉えれば、C to Cでない場合や余剰資産等の有効活用でない場合は、シェアリングエコノミーから除外すべきという考え方もあろう。しかし、シェアリングエコノミーを考える上で重要な点は、その範囲や定義ではなく、スマートフォン等によるインターネットの活用によって需給マッチングの時間が大幅に短縮され、従来不可能であったことが可能となった事実そのものにある。日本では業法規制等との関係が問題となる分野があるものの、シェアリングエコノミーの広がりは着実に日本経済の仕組みを変えていくと予想される。

(※1)URL:http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/senmon_bunka/kaikaku.html
(※2)車の共同使用の仲介については、内閣官房IT総合戦略室「シェアリングエコノミーに関する検討経緯」(第1回 シェアリングエコノミー検討会議(平成28年7月8日)資料1-3)では「車の共同使用」分野に区分

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