小中学校に保育所を

2016年7月25日

1学期が終わり、夏休みを迎えた子どもたちも多いだろう。1学期の大きなイベントと言えば、運動会だろうか(※1)。児童数が多く、待ち時間ばかりが長かった筆者自身の子ども時代の運動会と比較すると、わが子らの出番はややもすると見過ごしてしまうほどあっという間に回ってくる。目下、競技を行う子どもたちよりも応援席のギャラリーの方が数は多いようである。

少子化による児童・生徒数の減少の影響で、近年、廃校となる小中学校や学校施設内に発生する余裕教室が増加傾向にある。文部科学省ではこれらの廃校施設・余裕教室(以下、余裕施設)について、「学校教育に支障がない範囲内で、地域の実情や需要に応じて積極的に活用していくことが望ましい」(※2)としている。現状、廃校については、学校(大学を除く)や社会体育施設(体育館、水泳プール、運動場など)、社会教育施設・文化施設(公民館、図書館、博物館、劇場、音楽堂など)等に、一方で余裕教室については、学習方法・指導方法の多様化に対応したスペースや特別教室等の学習スペース等に、転用されるケースが多い(※3)

そうした中、割合としては少ないが、小中学校の余裕施設や敷地の一部を保育所へ転用する事例が見られる。余裕スペースを利用した保育所は比較的短期間での整備が可能なため、待機児童対策を重要課題に位置付ける自治体では、急増する保育ニーズへの対応として進められたようだ。例えば、東京都品川区の2か所の保育園では、小学校の施設を活用した分園の整備によって(本園は近隣にある)、それぞれ24人、26人の定員を拡大させている(2010年4月)(※4)

余裕施設を保育所に転用した現場では、園児が十分な広さのある校庭を園庭として利用できる点や、日常的に小学校への期待を高めることによって小1プロブレム(※5)が緩和される点、保育士や学校教職員が子どもの学びの連続性について共通認識を持つことができる点、また、児童・生徒にとっても園児とふれあうことが情操教育となる点など、多くのメリットが確認されている(※6)

こうした余裕施設の保育所への転用を促進する議論は、過去に何度か行われてきた。ところが実際に転用するかしないかは各自治体に任されており、あまり進展していない。待機児童対策を推進する保育担当部局と、学校教育を担う教育委員会の連携がうまく機能しないためなのか、国庫補助を受けて整備した学校施設を保育所として転用する財産処分手続きの煩わしさのためなのか、理由は判然としない。もちろん、調理室や調乳室を設ける改修費用の発生や、保育・教育課程が異なる保育所と学校間で日常的な交流を実施する困難さなど、課題も少なくはないだろう。

しかし、深刻化する待機児童問題(※7)への対応として、新たに用地を取得する必要がない保育所の整備は、十分なスペースの確保が難しい都市部においては特に魅力的に映ろう。児童・生徒数が減少する昨今、既存の小中学校の余裕施設を保育所として有効活用することを、改めて検討してみても良いのではないだろうか。

(※1)最近は、残暑対策や行事の分散化を目的に、春に運動会を行う小中学校が増えている。
(※2)文部科学省ウェブサイト「余裕教室・廃校施設の有効活用」
(※3)文部科学省「公立小中学校における余裕教室の活用状況について(平成25年5月1日現在)」、「廃校施設活用状況実態調査の結果について(平成26年5月1日現在)」
(※4)品川区ウェブサイト「西品川、中延保育園で小学校施設を活用した待機児童対策開始」
(※5)入学したばかりの小学1年生が学校生活になじめない状態が続くこと。
(※6)国立教育政策研究所 文教施設研究センター「学校施設の有効活用に関する調査研究」研究会『余裕教室を活用した保育所整備について ~学校施設の有効活用に関する調査研究報告書~』(平成24年9月)
(※7)2015年4月時点の全国の待機児童数は23,167人(前年から1,796人増加)。年度途中からの入所は難しく、2015年10月の待機児童は45,315人に増加している。(厚生労働省「平成27年4月の保育園等の待機児童数とその後 (平成27年10月時点)の状況について」)

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