中国 不動産市場は株式市場と同じ轍を踏むか―当局が警戒する非合法不動産ローンの実態―

2016年5月16日

中国不動産市場のバブルが危惧されて久しいが、北京、上海、深セン等の中国の大都市の不動産価格はそうした懸念がある中でも上昇を続けてきた。現在の不動産価格の水準に妥当性があるかは定かでないが、ここのところ中国当局は不動産市場の動向に対し懸念を示し始めている。当局の懸念の対象は一部の不動産仲介業者が提供する非合法ローンである。

当局が問題視する非合法ローンの代表的なものとしては「首付貸」が挙げられる。「首付貸」とは不動産購入の際の頭金を賄うローンである。本来、頭金に対するローンの提供は禁止されているが、一部の不動産仲介業者により、P2P金融等を資金源として不動産の販売と同時に当該ローンが提供されていたようである。「首付貸」は自己資金に見合わない高額の不動産取引や、転売による利益を期待した投機目的の取引を誘発しかねない。既に今年3月には中央銀行より警告が示されていたが、その後も同様のローンが提供されていたようである。報道に基づけば、4月下旬から当局は取り締まり強化のため、一部の商業銀行と不動産仲介業者の業務協力を1カ月間停止する等、具体的な措置を取り始めている。

不動産市場における非合法ローンの存在には、昨年の株式市場が思い起こされる。

2015年の中国株式市場における株価の急騰と暴落の背景の一つには「場外配資」と呼ばれる非正規の信用買いの横行があった。「場外配資」は正規の信用買いよりも高倍率でのレバレッジ取引が可能であったため、株価上昇に乗じた一獲千金を狙う個人投資家による利用が進み、株価の上昇に拍車をかけた。しかし、同年6月には当局による取り締まりが強化され、これを契機としてかその後の株価は急落に向かった。

無論、現在の不動産価格の上昇の要因を非合法ローンのみに求めるべきではない。また当該ローンに対する取り締まりは強化されつつあり、昨年の株式市場における経験を踏まえて事態の深刻化の前に当局が早期の対応をとっているのではないかといった期待もできる。しかしながら、今後も業態や名称を変えて同様の問題が再発する可能性は否定できない。中国に限った話ではないが、こうした監督当局の監視外にて発生するリスクには常に注意を払う必要があるだろう。

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中田 理惠「中国株式市場が抱える構造的問題」(2015年9月1日)

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