シニアにもっとお米を

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2016年04月20日

  • 秋屋 知則

日本のお米の1人あたりの消費量は昭和40年代をピークにほぼ半減している。戦後の食糧不足の時期を経て、食生活が豊かになって多様化してきたからだ。確かに日本人の食における米のウェイトは軽くなってきたが「和食」は、ご飯におかず、一汁三菜を基本とする理想的な栄養バランスを備えた食事スタイルが評価され、ユネスコの無形文化遺産として登録された。身近過ぎるとよさを見落としがちになるが日本の伝統的な文化として米を食べることはうまく伝承していきたいものだと思う。

消費量の具体的な減少理由としてはパンやめん類の増加がある。夕食が常時、パンという世帯はさすがに多くないが特に忙しい朝にはパン食が好まれている。パンは比較的、手軽に食べることができるのに対して、米は調理に手間や時間がかかる。しかし、逆にいえば、単独世帯が増加してくる中で家で作って食べることが減る一方、定食にセットされたご飯やコンビニのおにぎり、持ち帰り弁当など米の消費機会は増えるかもしれない。例えば筆者のまわりの昼食の様子を見て思うことだが、外食や中食でも米は食べられており、単純に金額だけで米からパンへ主食が交替したとは言い切れないだろう。

さらに少子高齢化の進展で食べ盛りの子どもの数が減り、米の消費が落ちたとも指摘される。同時に高齢者が増加すると一般に食べる量が少ないので米の消費が落ちることに加え、嗜好の変化もある。従来、高齢者はあっさりしたものを好むと言われてきたが、既に洋食をはじめ油や乳製品を使った食事に慣れてきた世代になってきており、食事が和食一辺倒ではなくなってきている。

そうした中で消費増を考えると、つい若い人たちをイメージするが、今後は、いかに年齢の高い人たちを米離れさせないかも案外、重要ではないかと思われる。まず若年層(20~30歳代、特に男性或いは単身世帯)では2~3割が全くか、しっかり朝食を食べていないというデータがある(※1)。この“朝食欠食”の市場を農水省は約1.7兆円相当と試算した(※2)。広義の外食の市場規模は約30兆円(※3)。彼らが朝食に米を食べるようになってくれればとの期待も理解できる。

昼食をみると、実は給食を実施している小・中学校では米余り対策だけでなく、食育という観点から現在、米飯が定着している。パン中心の洋食メニューの給食で育った筆者には驚くべきことだが平均で週3回以上、給食で米飯を食べており、さらに回数増が指向されている(※4)。若い人たちが朝食を抜かず、昼食と併せて米を食べてくれれば消費に貢献することになるだろう。

一方、人口構成比からみると、14歳までと、65歳から74歳、それ以上の人の比率は、其々10数%とほぼ同じだ。荒っぽくいえば、高齢者は子どもの2倍いることになる。(今後、さらに子どもの数は減り、高齢者の比率は高まっていく。)ただ食事から摂取する熱量は、年齢が上がってもピークから極端には減らず、高齢者になっても2割前後減る程度で、決して半分になるわけではない。もちろん、量で無理やり競わずとも、より質の高いものを食べてもらうことでもいい。労働力として期待も高まるが、国の胃袋としても健康な生活を送ってもらう中で、今まで以上にシニア層のお米の消費に期待をかけてはどうかとも思う。

(※1)平成26年国民健康・栄養調査結果の概要(厚生労働省)他
(※2)平成22年度食料・農業・農村白書
(※3)「平成26年外食産業市場規模推計について」(日本フードサービス協会)
(※4)平成27年版食育白書(内閣府)

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