過剰ストックはどう解消すべきか?

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2015年09月11日

  • 大和総研 顧問 岡野 進

中国経済の問題を考えるとき、金融問題と並んで実物面で大きい問題と考えられるのが過剰ストックの問題だ。過剰ストックが顕在化したとき、どのようにして解消すべきか、様々な議論がありうる。中国は適切な解消策を採れるのだろうか?

日本経済を振り返ってみると、バブル景気が終了した90年代初頭に過剰ストック問題が顕在化した。その捉えられ方は当時様々であり、また対策の考え方も様々であった。当初は供給過剰というより金融引き締めによる需要の低迷が問題であって、ストックが過剰なのではなく需要が過小なのだという意見が強かったように思われる。これは財政政策、主に公共投資の拡大によって需要過小を解消して景気を浮揚させて不況を克服し、再び4%程度の経済成長軌道に回帰させようという主張につながった。ストックの過剰が顕在化したのは主に民間企業部門であったから、公共投資による公的ストックの増加はストックの過剰を深刻化させたわけではないが、財政政策の効果には限界があった。不良債権の増大という金融問題も景気の足を引っ張った。公共投資などの財政政策は、確かに不況からの脱却に役立ったが、それは一時的であって経済全体を再び成長軌道に回帰させる役割は果たせなかったのではないか。

90年代の過剰ストック状態は、かなり産業間で異なっていて、公共投資拡大によって稼働率を上げられた部門はそう多くはなかったのではないだろうか。持続可能な成長に適合した産業構造への調整や生産性を上げるためのイノベーション、それを支える民間投資が不足していたのではないかと思われる。

90年代後半になると、むしろ過剰ストックを廃棄することによって調整を加速させるような局面に入り、97~98年にはそれが深刻な不況をもたらした。財政政策・金融政策の発動とITブームでかろうじて不況を脱したが、最終的に過剰ストック問題や裏側にある不良債権問題を解決するためにはさらに数年の時間を要した。

現在の中国の過剰ストック問題も、需要サイド、供給サイドの対策をうまく組み合わせて対処しなければ解決できないだろう。それでも中国経済がソフトランディングできるかどうか断言することは難しいし、時間がかかることを覚悟しなければならないのではないか。

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