地方移住で振り込め詐欺の被害は減るか

2015年7月8日

警察庁によると、いわゆる振り込め詐欺の2014年の被害総額は約380億円と前年に比べて約5割増えるなどこの数年拡大傾向にあり、2015年に入っても勢いが止まらない(※1)。また、2014年の認知件数は1万1,000件超にのぼり、一日当たり30件に達することから、実際に報道で目にするのは例えば1,000万円を上回るような多額の被害にあったケースに限られているように思われる(平均被害額(既遂)は約365万円)。

そのようなニュースに接する度に、高齢者が多額の現金や定期預金を持っている事実に驚かされるが、被害者の8割以上が60歳以上の高齢者であり、特に70歳以上の女性が全体の約半分を占めている。背景には、被害に遭う確率が非常に高い高齢者は金融資産を保有しているという事実があろう。

家計調査(2014年、二人以上の世帯)で世帯主の年齢階級別に1世帯当たり貯蓄額をみると、年齢が高くなるにつれて貯蓄額は多く、40歳未満が562万円、40歳代が1,030万円であるのに対して、60歳代は2,484万円、70歳以上は2,452万円となっている。2,500万円以上保有している世帯は、全体では22.5%だが、世帯主が60歳以上の世帯では34.0%を占めている。さらに、若年層ほど住宅ローンなどの負債を抱えている点を考慮すると、格差は一段と広がり、高齢者ほど動かせる金額が多いといえる。だが、60歳以上の高齢者が挙げる貯蓄目的は約6割が“病気・介護の備え”、2割が“生活維持”と切実なものであり、それらを騙し取られたショックは如何ほどのものであろう。

一方、地域別に振り込め詐欺の被害状況をみると、犯罪の種類によってばらつきはあるものの、特殊詐欺は件数ベースで約半数、被害額で40%が東京圏(東京都及び神奈川・千葉・埼玉県)に集中している。なかでも、オレオレ詐欺は全国の約7割にのぼる。

しかし、東京圏の高齢者人口が極端に多いわけではない。東京圏の総人口は日本全体の28%を占めるのに対して、60歳以上に限ると日本全体の約4分の1にとどまる(総務省「人口推計 平成26年10月1日現在」)。言い換えれば、日本全体では3人に1人が60歳以上だが、東京圏は3割と全体の平均をやや下回っており、その人口構造は相対的に若い。にもかかわらず、東京圏の振り込め詐欺の被害は多く、それだけ東京圏の高齢者は騙されやすいということになろう。例えば、東京圏のなかで60歳以上比率が最も低い東京都の場合、被害者の9割が60歳以上である。東京都で多いオレオレ詐欺の手口は、会社でのトラブルを理由にしている割合が高く、しかも金銭収受方法は手渡しがほとんどとされる。東京圏という狭いエリアであっても、親と子(あるいは祖父母と孫)の関係は必ずしも濃密ではないということだろうか。このように、振り込め詐欺は都会的な性格を持っている犯罪かもしれない。

昨今、高齢者をはじめとして、東京圏など大都市から地方への移住を促す話が話題になっている。日本創成会議が、予想される東京圏の急速な高齢化を背景に医療・介護の観点から問題提起している他、政府の「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」でも、地方移住の支援や「日本版CCRC」構想の推進が謳われている。果たして、地方移住が実現すると振り込め詐欺の被害は減るのだろうか、それとも逆に増えてしまうのか。

(※1)振り込め詐欺と振り込め詐欺以外を合計した特殊詐欺全体では2014年の被害総額は565億円を上回り、過去最高となった。http://www.npa.go.jp/safetylife/seianki31/higaijoukyou.html

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