成長戦略メニューの取捨選択を行うべき

2015年7月1日

安倍政権で3度目となる成長戦略が昨日(6月30日)、閣議決定された。今回の成長戦略については、前回までで主要なメニューが出尽くした感があり、目玉は少ないと言えよう。ただ、以前よりも全体として人材育成に重点が置かれつつあり、我々が以前から指摘してきたように、雇用のみならず教育にも言及が増えたことは注目に値する。

今回の中心テーマとしては、生産性の向上が謳われている。もちろん、これ自体は望ましいことだが、ではどうすべきなのかといった本質的な議論がやはり弱い印象を受ける。

例えば、生産性を高める解決策としてサービス業でITやロボット・人工知能の積極的な導入を図るなどと書かれているが、もちろんそれらは有効だと思われるものの、どこか解決策として安直な印象が否めない。さらに、前回宿題として残された雇用流動化(予見可能性の高い紛争解決システムの構築)や長時間労働を是正するための実効性を高める対策(勤務間インターバル規制など)、そして企業による農地保有などへの対応が、生産性の向上には必須と考えられるが、こちらは今回の成長戦略では見送りとなっている。

人口減少・超高齢社会という国内要因、グローバル競争の激化という海外要因が制約条件となる中で、日本の産業が発展し、豊かな経済・社会を実現するにはどうすべきなのか。政府でもこれまで数多くの議論を行ってきており、その示す方向性は正しいと思う。しかし重要なのは、成長戦略の実効性を高めることだろう。現在行われている数値化目標の設定(KPI)やそのスケジュール管理等を継続する一方、全体として政策の取捨選択を行い、優先度の高いものから着実に実行に移していく体制を整えるべきである。

政策の取捨選択を行うには、マクロ的な視点が欠かせない。人口減少で国内市場が縮小するのであれば、国内産業を高付加価値産業へ底上げし、少ない人数でもたくさんの付加価値を創ること、そして観光も含めて海外へ市場を拡大し、国内市場の縮小を補うことが必要となろう。日本の生産性は米国の7割程度であり、特にサービス産業の低い生産性を引き上げるべきである。それには、市場機能の最大限の活用、人的資本の強化とその多様性の促進(雇用と教育の改革)、そして都市機能の活用、が有効だろう。

先日、合意へ向けて大きく前進したTPPは市場機能を高める政策であり、経済取引のルールを世界で共通に近づけることで取引を円滑にすれば、海外市場へアクセスしやすくなる。多様な人材が集まる都市をうまく活用して、女性や高齢者、若者、外国人の交流が増えれば、新しい発想も生まれやすくなる。人口密度が高まると限られたエリアでも多くの人々が集まり、サービス産業の生産性が高まる。専門人材だけでなく、物事を俯瞰的にとらえられる人材を育成する教育も重要だろう。

これまでの成長戦略では、技術や産業そのものの開発・育成が重視される傾向が強かった。しかし、限られた資源や時間の中で成長戦略の実効性を高めるには、政策メニューを取捨選択し、多様なバックグラウンドを持つ企業や人々が互いに切磋琢磨する経済・社会システムを創ることへ一層重点を置くべきだと考える。

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