2025年のASEAN

2015年2月17日

多くの日本企業が進出するASEAN(東南アジア諸国連合)で、今、経済共同体創設への取組みが急ピッチで進められている。これはASEAN経済共同体(AEC:ASEAN Economic Community)というもので、本年末の創設が予定されている。その取組みの柱として、以下の4つ(AEC2015)(※1)が挙げられている。

  1. 単一市場と生産基地
  2. 競争力のある経済地域
  3. 公平な経済発展
  4. グローバルな経済への統合

ASEANでは、それぞれの柱について、具体的な取組みと大まかなスケジュールを示している。この中で中心となる取組みは①の「単一市場と生産基地」に含まれる物品・サービスの自由な移動(関税の原則撤廃、非関税障壁の削減・撤廃、サービス貿易の自由化など)、投資・資本の自由な移動(金融資本市場の自由化・統合など)、熟練労働者の自由な移動である。すなわち、ASEAN域内のヒト、モノ、カネの移動を円滑にする取組みと表現できるだろう。

AECについてよく勘違いされることがある。それは2015年末に全ての取組みが完了(市場の自由化や統合)し、その時点から自由化等が始まるということである。ここには2つの間違いがある。1つ目は既に取組みが完了している分野があり、順次活用されているものがある。例えば域内関税の原則撤廃についてはASEAN6ヶ国で既に99%超の関税が撤廃されており、企業は物品の輸出入の際に利用している。2つ目は、2015年末までに取組みが終わらない分野があり、2016年以降も自由化や市場の統合に向けた取組みを続ける必要があることだ。例えば、ASEAN域内の非関税障壁の削減・撤廃は、2015年末までに完了させることは難しいとみられている。

では、2015年末までに実施できなかった取組みをいつまでに終わらせるかを含めて、ASEANは2016年以降について、どのようなことを考えているのであろうか。ASEANが昨年11月に公表したステートメントによれば、経済共同体の創設の次の目標期限を2025年と設定している(取組みによっては当初から2018年に完了予定のものもある)。まだ具体的な内容は明らかではないが、上述した4本の柱に代わって2016年から2025年の計画(AEC2025)では以下の5本の柱が掲げられている(図表参照)。

2016年から2025年の計画(AEC2025)の5本の柱

図表にあるようにAEC2015とAEC2025を比べると、AEC2015の4つの柱はAEC2025と表現は異なるものの、継続して取り上げられている。ここから読み取れることは、既存の4つの柱についてはやり残した取組みを実施することに加え、更なる共同体の深化を目標としていることである。新しく導入された“Enhanced Sectoral Integration and Cooperation”が示すものは不明であるが、各分野でバランスが図れていない事項の調整を意図しているのではないか。各分野の取組みは各担当大臣(各省庁)を頂点とした会議で話し合いが行われており、縦割りで決められている。その部分に横串を刺し、情報共有と取組みへの協力の強化を図るのかもしれない。

ASEANは、本年秋のASEANサミットでのAEC2025の採択に向けて、各国代表者の話し合いを行っている。AEC2025はASEANの将来の方向性を考える上で重要な要素になり得る。秋のASEANサミットに注目したい。

(※1)4つの柱の具体的な内容は、神尾篤史「ASEAN資本市場統合の取組み」(2012年8月31日)を参照。

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