やっぱり英語の苦手な日本人

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2015年01月29日

  • 秋屋 知則

昨年の秋、初めて北京を訪れた。これまで仕事では、何度か香港をはじめ中国への出張経験があったが成長著しい国の首都の様子やスケールの大きな世界遺産などを観たいと思いプライベートでは北京を選んだ。折も折、PM2.5による大気汚染の影響も懸念されたが、紫禁城(故宮)や頤和園あるいは鳥の巣と称されたオリンピック会場などに足を運んだ。

勝手気ままな一人旅だったが、入出国では旅行会社が人を付けてホテルとの往復をサポートしてくれた。最終日に空港へ戻る途中の車中で、率直に旅の印象として「中国の街の中では英語が使えないですね」と言った。すると、客とはいえ、看過できないと思われたのだろう。中国人と思われる、その方から「日本人の英語もひどいですよ」ときっちり反論された。さらに曰く「中国は日本と同じで受験のための英語なので読み書きが中心だからスピーキングは弱いがレベルは高い」と。

実は、万里の長城へと向かう列車の中で香港にある外資系企業で働いているお嬢さん(親子)と少し話をしたのだが、そのときも「自分が働いている会社で日本人とやりとりすると彼らの英語が分かりにくい」と言われていた。世界的な企業の東京オフィスで働く人たちだから、個人的な感想かと思っていたのだが、例えばTOEICの国別スコア(2013年)を見ると客観的には認めざるを得ないという現実もある。

トップのバングラデシュの895点やインドの861点というカナダやドイツを上回る平均点は英語の苦手な筆者からすると驚異的であるが中国も716点で12位にランクされている。

英語教育に力を入れている韓国が632点、日本は512点で40位とかなり下位だ(異論もあるが他の英語力試験でも日本の劣位は変わらない)。

グローバル化が進み、公用語が英語という日本企業も出てきたし、子供たちも早くからネイティブの先生と英語で触れ合う機会が増えた。ルーツの全く違う外国語とはいえ、中学から高校、あるいは大学と毎週、あれだけの時間、もし語学教室で勉強すればもう少し身に付くのではないかと思うと、学校でどのように英語を教えるべきか、考え直してみるべきかもしれない。門外漢では状況の改善に助言もままならないが、観光立国を目指している我が国へは、今や年間1,300万人の外国人がやってくる。しかし、彼らは先進国である日本を訪れた印象として看板や商品名に横文字が溢れている割に“日本人は英語がしゃべれない”と我々の想像以上に思っているのかもしれない。

(なお、決して逃げるわけではないが、ICTの発展に伴う翻訳アプリやあらかじめ外国人のために準備しておいた観光ガイドなどの英語コンテンツの充実によって、日本人はしゃべれないが、日本を英語でのコミュニケーションでは不自由しない国に変えるという選択肢もあるにはある。)

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