IT女子になろう

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2015年01月14日

最近目にすることが増えたと感じるのが、IT系ユーザーグループやイベントでの「女子部」である。ユーザーグループとは、製品のユーザーが使い方を学んだり新しい使い方を試したりする集まりで、製品を提供する企業や組織が支援していることが多い。組織にとっては、バグや思わぬ使い方の発見、ユーザーの不満を吸い上げることなどができる機会となっている。筆者が開発現場にいた10年以上前は、社外のユーザーグループでは、いつも女性は少数派であったし、女子部のような女性だけの集まりもなかったように記憶している。

IT女子部についてざっと検索しただけでも、Java(プログラミング言語など)、Android(Googleが提供しているスマートフォンなど携帯端末用OSなどのプラットフォーム)、AWS(Amazon Web Services:Amazonのクラウドサービス)などが見つかった。これらは、こうした製品を使って仕事をする人たちの参加が多いようだ。一方、日本マイクロソフトは、2014年暮れに女子中高生向けのプログラミング体験講座を実施した(※1)。こちらは、プログラミング初心者である若者に対する取り組みである。

こうした動きが、一般の、特に女性にも広がっていくことを望んでいるが、その理由は4つある。

まず、アルゴリズムを学べることである。アルゴリズムは、「何か物事を行うときの『やり方』」であり、「その『やり方』を工夫して、より良いやり方を見つけよう」とすることである(※2)。料理や旅行の時の交通機関の選択も、アルゴリズムといえるだろう。彩りや栄養バランス、遅延・欠航の可能性などを加味しなければならない分、日常生活の方がよほど「最適なやり方」を見つけるために複雑なことをしている。このことに気づけば、ITに対する食わず嫌いが減ると期待する。

2つ目は、モノづくりの妙味が味わえることである。ソフトウェアやシステム構築はモノづくりというよりコトづくりになるかもしれないが、自分が関わったものが無事に稼働して、想定通りの結果を出した時の喜びは大きい。最近は3Dプリンタが使いやすくなっているし、自動車もソフトウェアの塊といわれるくらいITが重要な位置付けにある。アクセサリーなどの小物を作るのと同様に、ソフトウェアと工作機械などを連携することで、モノづくりとコトづくりの両方を楽しむことができるだろう(※3)

3つ目は、護身術としてのIT技術習得である。プログラミングができることが情報セキュリティに強い人材とイコールではないが、この操作(クリック)が何を意味するか、あるいはこのサービスの意図は何か、といったことを考えるようになるのは、IT護身術の入門編といえる。

最後に、伝播力である。若い女性の口コミの速さ・広さは知られているところだが、彼女たちが母親になった時、家族、特に子どもたちに対して適切なITの使い方を伝授できるようになるのではないかと期待している。IT女子部の活動は、中度IT人材の裾野を広げる(※4)またとないチャンスとなろう。

(※1)日本マイクロソフト(9 Dec 2014) 「プログラミングを学び、教えるキャンペーン週間 “Hour of Code” ~子どもたちが“コードを書く” スキルを身に着けるための支援プログラム『Microsoft Imagine』を発表~」 (2015年1月5日閲覧)
(※2)国立情報学研究所 宇野 毅明 「アルゴリズムってなんでしょか
(※3)津田塾大学 「女子中高生のための情報・メディア工房2014」、芝浦工業大学 「Fab Girl Project」
(※4)大和総研 ESGニュース(2014年3月12日) 「新年度を迎える前の『大人』のICTリテラシー向上推進
大和総研 ESGレポート(2013年8月29日) 「消費者教育におけるネットリテラシー
大和総研 コラム(2013年7月8日) 「中度情報人材を増やそう

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