注目される"木の学校"

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2014年11月27日

  • 大澤 秀一

国内最大級の面積(延床面積、約7,471m2)を誇る木造2階建て校舎に改築された、守谷小学校(茨城県守谷市)を見学する機会に恵まれた。国産カラマツ材を使用した大断面集成材(構造材)が、間仕切りの少ない開放的で意匠性あふれる空間を生んでいた。幅広の木の廊下が80mも続き、教室も従来より1.5m横幅が広く9.5mもあった。降り注ぐ陽光は地元の八溝杉を利用した壁と床に反射し、優しい光となって教室を照らしていた。見学の終盤、机やいすなどの木工品に触れていると、自宅にいるような安心感に包まれた。

文部科学省によると、昨年度(2013年度)、新しく建設された公立学校の施設数は1,242棟で、このうち254棟(20.5%)が木造だったという(※1)。構造は非木造でも内装を木質化したものが682棟(54.9%)あり、何らかの形で施設に木材が利用されている割合は合計で75.4%に及んだ。鉄骨造やビニールクロス貼りを当たり前と思っている都市部の人には、意外に感じられるのではないだろうか。

かつて、公立小中学校建物は、防災上・安全上の観点から不燃堅牢化が進められ、木造から鉄筋コンクリート造の建て替えが進められてきた。しかし、1985年、柔らかで温かみのある感触や優れた調湿効果により豊かで快適な学習環境を形成することや、森林の保全や地球の環境問題などについて学習する教材としての活用を図るため、文部科学省(当時文部省)から市区町村に木材使用促進に関する通知が発出され、木造校舎の建築にも取り組んでいくことになった。

現在、木造校舎の保有面積は191万m2(1985年以降の建設分は129万m2)で、非木造校舎の保有面積(15,855万m2)に比べればまだまだ小さい(※2)。木の良さは理解できるが、知識不足と経験不足から建設に躊躇していることも理由の一つとなっているらしい。文部科学省は林野庁や国土交通省などと連携し、事例紹介や補助事業、木造校舎等の基準見直し等を進め、木の学校作りを積極的に支援している。

木材利用の教育的効果の意義や地球環境への配慮などが浸透すれば、木の学校が全国に広がることが期待されるが、地域への貢献も一つの鍵になると思われる。我が国は国土面積の68%を森林が占める世界有数の森林国である。学校施設における木材利用は、当地にある木の文化の継承や地域コミュニティの形成につながるばかりでなく、地域材の利用や地元の建設業の活用は地域経済の活性化にもつながる。木の学校の役割は我々が想像する以上に大きいかもしれない。

(※1)「公立学校施設における木材利用状況に関する調査結果(平成25年度)」、文部科学省(平成26年11月5日)
(※2)「公立学校施設実態調査 平成25年度」、文部科学省。保有面積とは、校舎・屋内運動場・寄宿舎に区分された建造物の面積をいう。

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