中度情報人材を増やそう

2013年7月8日

7月4日、日本で初めてのネット選挙(インターネット選挙運動の解禁)となる参議院選挙が公示された。なりすましや誹謗中傷の広がりなどが危惧されているが、こうした事態を少しでも避けるべく、候補者だけでなく、我々、有権者も「情報リテラシー」を高める必要がある。未成年者は、もともと選挙運動が禁止されているが、SNS利用などによって選挙違反を起こさないよう、未成年者向けのチラシも作られている(※1)

今回が初めての選挙になる年齢の人たちは、学校の授業に「情報」があった世代だと思う。ネットをうまく活用している若者がいる反面、無防備にプライバシーを公開したり、いわゆる炎上騒ぎなどを起こしたりして、「こんなことになるなんて思っていなかった」と落ち込む若者の話題も絶えない。もちろん、大人世代でも情報の扱いに疎い人は少なくないが、低年齢層にまでスマートフォン(以下、スマホ)を始めとしたモバイル機器が普及してきていることから(図表1)、情報リテラシーが不十分な層が増えているのではないかと感じている。

図表1 過去1年間にインターネットを利用したことがある人の利用機器
図表1 過去1年間にインターネットを利用したことがある人の利用機器
(注)機器別の回答は複数選択のため、合計は100%にならない
(出所)「平成24年通信利用動向調査」の「平成24年世帯編(世帯構成員) 統計表セット」を基に大和総研作成

インターネット初心者を対象とした「ネット安全教室」は、政府、NPO、企業などにより全国各地で開催されている。例えば経済産業省では、「初心者でも安全快適にインターネットを楽しめるよう情報セキュリティの普及啓発」と、「ネットワーク・セキュリティの啓発に関わる人々に『インターネット安全教室』セミナーの開催ノウハウやコンテンツを提供」することを目的として、「インターネット安全教室」を開催している。「2012年度インターネット安全教室 実施報告書」によると、ここ数年の年間開催回数は150回前後、参加人数は1万人前後となっており、「2009年度以降に小中学校での開催数が増えている」とのことである。

質疑応答も掲載されており、ウイルス、不正プログラム、迷惑メールに関するものが4割強と一番多い。2012年度の傾向として、SNSに関するもの、スマホの無料通話アプリに関するものなど、サービスを利用する上での安全性や注意点への関心が高まっているとしている。

 対処方法として、「怪しいリンクをクリックしない」、「利用規約をきちんと読む」といった回答をしているが、怪しいかどうか判断できない、利用規約を読んでも意味が分からないという問題は残ると思われる。こういったレベルの質問が出る人たちに対しては、回答通りに対処できない可能性(パソコンの機種やアプリのバージョンなど環境の違いで具体的な対処方法が違ってくる)や、今後、新しい事象が起きた時のための知識とならないのではないか(1つの対処方法を覚えても、少し違う事象が出てくると応用した対処は難しい)、という懸念を覚えた。リスクの有無・程度の判断力、対処方法の調べ方のスキル、対処方法の信頼性判断力などがあれば、応用がきくと思われるが、これはネットに限らない話である。

2013年3月にIPA(独立行政法人 情報処理推進機構)主催で、「情報セキュリティエコノミクスシンポジウム2013」が開催された。この中で「携帯電話販売店、ハローワーク、運輸局などの職員が情報を探偵に売り渡していた事件があったが、罪の意識のないお小遣い稼ぎだった」「実際には管理策として当たり前のことができていない企業が多い」ことが紹介され、「ITや情報セキュリティの高度人材育成が課題といわれているが、実は中度人材が必要ではないか」という話(※2)を聞いたとき、非常に納得した。昔から気になっていたことは、これだったのである。筆者流に解釈すれば、自分にも他人にも危険のない情報利活用ができる「中度情報人材」の育成である。中度人材の層が厚くなれば、高度人材の育成にも役立つだろう。

(※1)総務省 「インターネット選挙運動の解禁に関する情報
(※2) 岡村 久道氏(弁護士法人英知法律事務所 弁護士)談

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