ミャンマーの不動産事情

ヤンゴン郊外のニュータウンStarCity

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2013年04月23日

3月は定期異動のシーズン。そんな慌ただしい年度末のさなかに、約2週間の日程でビジネスブームに沸くミャンマーに出張する機会を得た。
初めて訪れたヤンゴンの感想は、イギリス植民地の時代の古い建築物が多く、20年前のインドの街並みに良く似ている。異なるのは、バイクや3輪車(オートリキシャー)が殆ど走っていないことなどであろう(※ヤンゴン中心部では走行が禁止されているそうだ)。その代わり、街中には日本でみる高級車も多く走っており、景気の良さを実感することができる。ただし、若干、景気は過熱気味であり物価上昇の懸念があることも否めない。輸入品に頼るミャンマーの物価は意外と高く、スーパーでの価格も他の東南アジア諸国と比較して安いとはいいがたい。現地のミャンマー人の感覚では、隣国のタイよりも物価が高いとのことだ。さらに需要が追い付かない外国人向けホテルの宿泊代も総じて高く、マンハッタンとまではいかないが、東京やロンドン並みの1泊料金を覚悟しなければいけない。

また昨今のミャンマーでは、ビジネスブームに連動する形で不動産価格も上昇の一途を辿っている。外国人からのニーズも高く、時折、街で見かける不動産屋には日本語ののぼり旗で“不動産買えます”といった文字も目に入るほどだ。仕事柄、現地の不動産事情を調査したいと思っていたところに、同行した人の勧めで、興味深い施設を紹介して貰うことができた。ミャンマー出張ではヤンゴン中心部から1時間ほど南下するティラワ経済特区へ視察するルートは人気が高いが、今回は、その道中のバゴー川、河川敷にある高級分譲マンションのStarCityである。

この施設内には大型商業施設やゴルフ場も併設する予定であり、例えるなら、多摩川の河川敷に六本木ヒルズがあるイメージといったところだ。広く豪華なエントランスは東京に駐在する外国人向けマンションの様子を呈している。神谷町や広尾の駐在者向けレジデンスと遜色がなく、ミャンマーで見た中で、最も豪華な施設のひとつであった。完成している住居棟内で施設の説明を求めると、白人のセールスマンが、快く慣れた手つきで施設内を案内してくれた(帰国後メールで質問を出したら彼がイギリス人であることが判明)。

気になるお値段は、8階建ての一番低層階にある1LDK(約50平方メートル)が日本円で約750万円。家族向けの3LDK、100平方メートルを超える物件で、約2,700万円とのこと。意外と高い。ただし、ヤンゴン中心部で販売されている駐在者向けマンションの平均価格と比較して約400万円以上は安い試算となった(※注、単位面積あたりの価格により大和総研で独自に試算)。ヤンゴン中心部から14マイル(約22km)、車で約30分離れるため、朝の渋滞が気になる所だが、その代わり割安で購入できることが魅力のひとつであろう。2020年には全ての施設が完成し、その頃には目の前の川のふもとに橋が架かり、現在は車で30分は掛かるヤンゴン中心部にも、たった10分で行けるようになるそうだ(力説していたが、橋ができるかは不明)。

ただし、既に完成している5棟の物件は全て完売しているとのこと。現在売りに出ている次の物件の完成は2014年の年末。銀行に対する国民の信頼が高くないこの国では、一般家庭向け住宅ローンなど存在せず、現金一括で購入するそうだ。さらに驚いたのが、購入者の90%がミャンマー人で、外国人の契約者は10%にすぎないという事実だ。殆どのミャンマー人には関係のない物件であろうと思ったが、意外と富裕者層の裾野の広さに驚きを覚えた。ミャンマーの新たな可能性が垣間見られるため、出張の際はぜひ立ち寄ってみるのをお勧めしたいスポットのひとつである。

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菅野 泰夫
執筆者紹介

金融調査部

主席研究員 菅野 泰夫