世界に向けた日本の再生可能エネルギー戦略を

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2013年02月19日

  • 大澤 秀一

中東地域に初めて本部が設置された国際機関がある。アラブ首長国連邦のアブダビにある「国際再生可能エネルギー機関(IRENA:アイリーナ)」だ。

IRENAは、太陽、風力、バイオマス、地熱、水力、海洋利用等の再生可能エネルギーの普及および持続可能な利用の促進を目的としている。主な活動は、知識管理・技術協力局(KMTC)が行う再生可能エネルギー利用の分析・検証・体系化、政策助言・能力構築局(PACB)が行う政策上の助言の提供、IRENA イノベーション・テクノロジー・センター(IITC)が行う加盟国の能力開発支援等である。

IRENAは、もともとドイツのイニシアティブで2009年1月に設立された国際機関だ。2009年6月の本部所在地選びで、アブダビが選ばれた。アブダビには、アブダビ首長国政府が、将来の石油資源の枯渇に備えて進めている、二酸化炭素を排出しない都市を建設するマスダールシティ(※1)が進行中で、本部の誘致が戦略的に行われたのであろう。

アブダビで先月(2013年1月13日および14日)開催されたIRENA 第3回総会では、再生可能エネルギーが、地産地消型エネルギーとして安全保障が確保できる点、利用時に二酸化炭素を排出せず気候変動問題に対応できる点、電化されていない途上国におけるエネルギー・アクセスを改善できる点等で重要性が増していることが確認された。IRENAの活動および組織運営が進展していることへの評価と今後への期待も表明された。

中国代表団からは、中国が2013年にIRENAに正式加盟し、技術分野の国際協力とグローバル市場の確立を促進する計画であることが明らかにされた。中国は今や世界最大のクリーンエネルギー投資国である。2012年は677億ドルと過去最高額を記録した(※2)。IRENAへの加盟で国家間協力を強めて貿易障壁を取り除き、低コストのエネルギー技術でグローバル市場を攻略する狙いがあるものと思われる。

日本はIRENAの理事国で任意拠出金でもトップクラスながら、意外にも国内の認知度は低い。第3回総会のニュースも国内にほとんど届かなかった。環境技術でトップを走る日本は、もっとIRENAを戦略的に活用して国際競争力を高め、世界の環境・エネルギー問題の解決に貢献すべきであろう。

(※1)マスダールシティウェブサイト
(※2)Bloomberg ウェブサイト

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