高度経済成長期・貿易摩擦期から変わらぬ外需の重要性

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2013年01月28日

  • 市川 正樹

「エコノミック・アニマルなどと揶揄された戦後の高度経済成長期には、さぞかし我が国の外需依存度は高かったのであろう」。あるいは、「貿易摩擦が激しかった頃は、やはり外需依存度が高かったのであろう」。このようなイメージには、一見違和感はないかもしれない。

しかし、個別市場の動向や貿易黒字のGDP比などはともかく、下図のように、実質GDP成長率への外需の寄与度を図にしてみると、その絶対的水準は、高度経済成長期以来、それほど変化しているわけではない。また、かつても、外需寄与度がマイナスだった年度も結構目立っている(1960年代前半までは景気の過熱による経常収支・貿易収支赤字も生じていた)。

かつては輸出のレベルは高かったものの、原油などの資源輸入額も大きいため、輸出から輸入を差し引いた純輸出としての外需は結果として小さくなっていたという見方もあるかもしれない。

しかし、下図のように、財貨・サービスの輸出のみの実質GDP成長率への寄与度の水準は高度成長期からさほど変わったわけではない。輸入のみの寄与度(マイナス)についても、同様である。なお、リーマン・ショック時の輸出の落ちこみは、実質GDPの減少率への寄与度でみれば、かつてない大きさだったこともわかる。

内需の成長率が格段に低下しているのは歴然としているので、むしろ、外需の相対的な重要性はますます高まっているとも言える。なお、貿易摩擦に関しては、繰り返しになるが、外需寄与度の水準ということであれば、貿易摩擦の時代も近年も概ね似たような状況にある。

結局、我が国がGDPの伸び率としての経済成長を実現するためには、外需の成長は不可欠なのであろう。「天然資源に乏しい我が国は、高度な技術や勤勉さなどの優位を生かした貿易で立国」といった姿は今も昔も変わらない。グローバルな競争がますます激しくなる中、競争力の強化はかつてにも増して重要であろうし、新しい高度な技術を取り込んだ品質の高い製品・サービスは世界市場でも歓迎されるであろう。

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(注)内閣府「国民経済計算」より、大和総研作成。
  1994年度までは平成2年基準、1995年度以降は平成17年基準。

 

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