観光面からみたASEAN

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2013年01月21日

年末年始に国内や海外旅行へ出かけられた方も多かったと思うが、2012年の日本人の海外旅行者数は過去最高の1,843万人を記録した模様(※1)とのことである。過去最高を記録するのは2000年以来ということだが、報道によると、歴史的な円高やLCC(格安航空会社)の路線拡大を背景にシニア層が海外旅行者数の伸びを牽引しているとのことである。欧州などは引き続き根強い人気があるが、アジア方面は領土問題で伸び悩む韓国や中国を除き、シンガポールやベトナムを中心として訪問者数は大きく伸びているようである。2013年についても引き続き海外旅行者数は増加する見込みで、2012年を上回る1,870万人が出国すると予想されている(※1)。連休の日並びの関係で比較的近距離の旅行先が人気になるとみられており、東南アジア方面の旅行者も順調に増加するとみられている。

ASEAN地域を観光面でみてみると、温暖な気候のリゾートや活気ある都市が多く、歴史的な文化遺産や食文化など魅力が多いことから日本人旅行者にも人気で、日本人の国別渡航先ではタイの6位を筆頭に上位20位以内に6カ国が入っている(※2)。ASEAN側からみても日本人は域内旅行者を除くと中国、オーストラリアに続いて3位の訪問人数となっている(※3)

ちなみに、2013年は日本とASEANの友好協力40周年にあたっている。日本とASEANの関わりは1973年の日・ASEAN合成ゴムフォーラムの設立から始まり、近年は包括的経済連携構想をはじめ特に経済的な面で関係が深化しているが、2013年は日・ASEAN双方で様々な交流事業が予定されている他、日本国内でASEAN地域の観光促進イベントが行われるそうであり、民間での交流や相互理解が深まる年と期待される。

もちろんASEANと一口にいっても国ごとに政治・経済状況は大きく異なっており一人当たりGDPが50,000ドルを超えるシンガポールのような国もあるが、ラオスやカンボジア、ミャンマーなどASEANに後から加入した一部の国々は、これからの高成長が期待される段階にある。こうした国々にとっても観光は重要な産業の一つであるが、ホテルや交通網などの観光インフラ整備が進んでいないという課題がある他、開発と自然保護の両立も重要な問題となっており、近年では地域全体でのグリーンツーリズムなど自然環境を活かした開発が模索されている。

日本としては、こうした国々に対するハードインフラの整備支援にとどまらず、観光業に関わる人材育成などのソフトインフラへの協力も「おもてなし」に代表される日本のサービス業のノウハウが活かせる分野であろう。そして、こうした協力を通じてより多くの日本人がこの地域を訪問する機会を得られ、結果的にASEAN各国、地域全体と日本との友好関係強化の一助となることを期待したい。

(※1)『2013年の旅行動向見通し』株式会社ジェイティービー(2012年12月20付ニュースリリース)
(※2)『保存版 旅行統計 2012(海外旅行者の旅行先トップ50(受入国統計))』一般社団法人日本旅行業協会 
(※3)『ASEANへの旅行者数(2010年)』日本アセアンセンター

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