グループ経営のあり方

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2013年01月09日

  • 間所 健司

米国の「財政の崖」回避による世界的な株高と円安、新政権の金融財政政策への期待から、わが国の株式市場も昨年末より活況が続いている。円安が輸出企業の業績に恩恵をもたらすとはいえ、企業の実態が大きく変わったわけではない。グローバルな競争に勝ち抜くために企業そのものが変革していかなければならない時期が到来したと言える。

企業の変革としては「ビジネスモデルの転換」があげられるが、歴史のある大企業であればあるほど、すでに確立したビジネスモデルを転換していくのはハードルが高く、大きなリスクも伴う。ビジネスモデルの転換とまではいかないが、グループ全体の経営体制を見直すことで、中長期的な経営戦略に基づく、新たな成長の機会を得ることも可能となる。

企業(グループ)の経営体制としては、「事業部制」「カンパニー制」「事業持株会社制」「純粋持株会社制」などがあげられる。このうち「事業部制」と「カンパニー制」は企業内経営体制であり、「事業持株会社制」と「純粋持株会社制」はグループ内経営体制と考えることができる。前者と後者の関係を見ると、「事業部制」を採用している「事業持株会社制」や「カンパニー制」を採用している「事業持株会社制」はあるが、「事業部制」を採用している「純粋持株会社制」はあり得ない。

「事業部制」は事業部のPL(損益計算書)のみの管理、「カンパニー制」はカンパニーのPLとBS(貸借対照表)を管理すると言われているが、事業部制でも投下資本に対する回収率である投資効率で評価している企業、カンパニー制でも営業利益率や営業利益で管理している企業もある。いずれにしても、企業内組織であるため、実務上で区別して議論する意味は少ない。

一方で、「カンパニー制」から「純粋持株会社制」に移行する企業も少なくない。カンパニー制をさらにピュアに進化させた形が「純粋持株会社制」であるとも言える。

「事業持株会社制」は多くの大企業が実行しているグループ管理体制である。例えば、親会社がA事業、子会社がB事業、C事業というように、事業別に分業している体制や、親会社が製品を企画・開発・製造し、子会社が販売・保守を行う体制、あるいは、親会社が企画・開発・販売を行い、子会社が製造する体制など、数多くのパターンがある。グループ価値の最大化を目的として、企業グループ内におけるバリューチェーンの中で、グループ各社に最適な役割分担を行っているものと言える。

持株会社が研究開発や不動産賃貸、新規事業開発などを行っているような、「事業持株会社制」と「純粋持株会社制」の中間の体制を採用する企業も散見される。

経営者の方や企画部門の方は、年の初めに自社のグループ経営体制について、自由な発想でいま一度再考してみるのも良いかもしれない。

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