2012年の株主総会シーズンがやってくる

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2012年03月19日

  • 藤島 裕三
上場会社の大部分を占める3月期決算企業は、2012年3月期の年度末を目前に、多忙な時期を迎えている。6月の株主総会に関しても待ったなしである。多くでは会場を既に押さえているだろうし、議案のドラフトが固まっていても決して早過ぎることはない。

昨年の株主総会シーズンにおいては、震災対応に話題が終始した印象がある。開会時に黙祷を行うのか、節電は十分か、災害時の避難誘導は大丈夫か、その際に総会を有効に成立させるにはどうすべきか、など議論されたことが記憶に残っているのではないか。

それでは今年の総会シーズンは何がテーマになるのか。筆者の実感から申し上げると、ずばり「コーポレートガバナンス」ではないか。総会前のエンゲージメントから当日の質疑応答まで、上場企業としてのコーポレートガバナンスに関する見識が問われる。

そもそも昨年の総会シーズンでは、東日本大震災で日本経済が危機的な状況にあったことから、グローバルな常識を振りかざしたガバナンス論議は手控えられた感があった。着実に復興が進展している今年は、株主・投資家の声がストレートにぶつけられよう。

昨年後半に続発した企業不祥事も、わが国企業のガバナンスに対する視線を厳しくしている。社外取締役がいない企業は最低限のガバナンスを備えていないと見做され、社外取締役がいる企業でも独立性そしてガバナンス体制としての実効性が問われるだろう。

上場会社に望ましい対応としては、「株主・投資家に信頼されるガバナンス」を意識して、改善の取り組みや説明上の工夫をすることに尽きる。単に社外取締役を選任するだけでなく、どのような役割を期待するのか、どうやって機能させるのかが重要となる。

論点は社外取締役だけではない。米国では昨年、役員報酬議案の上程が義務付けられており、その業績連動性が厳しくチェックされている。グローバル投資家はわが国企業に対しても同様に役員報酬の業績連動性を期待するが、実態は充実していると言い難い。

さらにはROEの低さなど資本効率についても、株主・投資家の不満は高まっている。トータルパッケージとしてのガバナンスの改善を、どのようなスケジュールで進めるのか、上場会社は総会シーズンが到来する前に、議論を尽くしておく必要があるだろう。

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