2012年のソーシャル・イシュー

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2012年02月14日

  • 大村 岳雄
ソーシャル・イシューという言葉をご存知だろうか。直訳すると社会事象であるが、一般的には「企業・組織体を取り巻く一般社会において、現在、高い関心を集めている、もしくは、近い将来に関心が高まるであろうテーマ・課題」と定義されている。ソーシャル・イシューに関する事項は、マスメディアに取り上げられやすく、これに関する情報を企業が発信した場合には、その企業のステークホルダーが持っているその企業像への影響が大きい傾向にある。また、ソーシャル・イシューに関する事項は、社会常識の変化(企業・組織に期待される内容)が生じやすいという点もある。


私の参画している「レピュテーショナル・リスク研究会(※1)」では、毎年初めにその年のソーシャル・イシューを発表している。具体的には、「政治」、「経済」、「災害・事故」、「環境問題」、「社会」、「科学・技術」、「経営」の7つの分野において、現在または将来に、社会の関心が高まるであろうトピックスを本研究会のメンバーがそれぞれの分野での知見に基づいて抽出し、メディア分析を行いながら選定している。さらに、有識者・経営者にアンケートなどを踏まえトップ10を決定している。2012年のソーシャル・イシューは下表の通りである。

図表 ソーシャル・イシュートップ10


それでは、このソーシャル・イシューをどのように活用すれば良いのであろうか。
企業内での活用方法として4つ紹介したい。
  1. 戦略的な情報発信(広報発信、非財務情報の開示)
    ・ 例えば、プレスリリースをする際に、上記のソーシャル・イシューにプラスの案件かマイナスの案件かを事前に確認の上、発信していく。マイナスの場合は、リリースを控える、タイミングを計るなど検討をする。
    ・ 有価証券報告書などにおける非財務情報開示においても、ソーシャル・イシューとの相関を鑑みながら発信する。
  2. 事業戦略検討
    ・ 事業戦略を検討する際に、ソーシャル・イシューとの相関に留意して事業選定を行う。
  3. リスクの洗い出し/リスクマップの作成
    ・企業で年度初めに行われるリスクの洗い出しの際に、年度の前提条件として使う。
  4. CSR活動のレビュー
    ・ 企業としてCSR活動分野をレビューする際に、ソーシャル・イシューとの関りから今後の取組みの軽重づけの参考とする。

今年は、復興需要が期待されるものの、為替問題(円高)は続き、若年層の失業率は高い。昨年、東日本大震災とタイの洪水で懸念されたサプライチェーンは、今年その構築が必要とされている。原子力発電の見直しに伴い、充電や発電の技術も注目されよう。
年末の10大ニュースを待つ前に、ソーシャル・イシューの活用を今後の企業活動の参考にお勧めしたい。


(※1)日本のレピュテーション・マネジメントに関する研究の第一人者である早稲田大学ビジネススクール経営専門職大学院の花堂靖仁教授を座長とし、レピュテーション資産をどのように評価するかについての共同研究を行うために、この分野の知見と関心を抱くビジネスパーソンが個人で参加し、自主的な研究活動を、2007年6月より行っている。http://reputationjapan.com

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