PFI/PPP事業促進のための処方箋

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2012年01月24日

  • 長谷部 正道
わが国の地方公共団体では、PFI法施行以来、実際にPFI事業を実施した経験のある自治体は全自治体の1/10以下であるうえに、こうした自治体においても職員の定期的な人事異動もあり、PFI事業実施のための即戦力となる職員は極めて少ないのが実態です。一方で、東日本大震災の復興事業に関しては、相次ぐ補正予算の投入などにより、従来型の公共事業費が潤沢に用意されており、復興事業の緊急性といった観点からも、多くの被災自治体において復興事業にPFIを活用する機運がなかなか生まれないといった指摘があります。

PFI事業の推進という観点からこのような状況を打開するために、現在内閣府ではモデル事業を実施して、地方公共団体にPFI事業の優位性を示すことを検討しており、またPFI事業のノウハウを補うために自治体からの要請に基づいて無償でPFI専門家を派遣する制度を創設しました。PFI専門家をどのように集めて派遣するかについては、民業圧迫がないように公正な運用が求められますが、基本的に正しい試みだと思います。

こうした専門家の派遣事業に加えて、地方公共団体向けのマニュアルや事業形態ごとのモデル契約例の整備などを今後とも地道に進める一方で、被災地の自治体のように、およそ自力ではPFI事業に取り組む余裕がないような場合には、市町村の委託を受けて、県または国のPFI専門家チームがPFI契約実務の代行を行うような制度の創設が望まれます。こうして個々の市町村単位ではなく、広域的に同様な類型のPFI事業を一括して契約を行うことにより、事業単価の低減、事業収益性の確保、事業実施の迅速化といった経済的な効果も期待できるところです。

また独立採算型PFI事業等の収益性を向上し、PFI事業への民間資金の投資を促すため、官民連携インフラファンド(民間資金等活用事業推進機構(仮称))を創設し、PFI事業者に対し出融資を行うための準備作業が政府において進められています(http://www.mof.go.jp/filp/plan/fy2012/zt007.pdf)。こうしたPFI事業者に対する財政的な支援に加えて、PFI事業者がコントロールできないような需要リスクを事業者に負わせないように官民間でのリスク配分を適正に行うこと、PFI事業者の提案した提案内容に対して何らかの著作権上の保護を与えること、PFI事業者に事業からの退出(転売)権を保証することなどがPFI事業へ民間資金を呼び込むためのキーポイントとなるものと思われます。

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