PFI/PPPは震災復興のための打出の小槌たりうるのか?

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2011年10月05日

  • 長谷部 正道
冒頭に、今回の東日本大震災で尊い命を失われた方々には心より哀悼の意を表させて頂きますとともに、いまなお、仮設住宅などで御不自由な避難生活を送られている皆様の生活が一日も早く正常化されますことを心よりお祈り申し上げます。

今回の東日本大震災におきましては、こうした人的な損失ばかりでなく、住宅、店舗、工場等の建造物、水道・ガス等のライフライン施設、港湾・空港等の社会基盤施設等で約16兆9千億円の被害が発生したと政府では推計していますが、これらの被害のうち、道路、港湾、空港などの公共土木施設については、国と地方公共団体が分担して災害復旧することが法律で定められており、国・地方合わせて、5年間で19兆円、10年間で23兆円程度の支出が見込まれています。

一方で、国と地方の長期債務残高が平成22年度末で869兆円(対名目GDP比率181%)にのぼり、国の一般会計の公債依存度が平成22年度補正後で45.8%という厳しい状況にあるため、復興財源として、所得、法人、たばこ、個人住民の各税を総額で9兆2000億円増額することを9月27日に政府・民主党の三役会議で決定されたことは記憶に新しいところです。

こうした厳しい財政環境の中で、少しでも国民負担を軽減するために、民間資金を震災復興に積極的に活用すべきと東日本大震災復興構想会議等が提言されていることは極めて順当であり、折しも震災発生当日にいわゆるPFI法改正法案が閣議決定され、速やかに国会で成立したこともこうした民間資金に対する熱い期待を加速させ、政府の新成長戦略においても「PFI事業規模について、2020年度までの11年間で少なくとも約10兆円以上(従来の事業規模の2倍以上)の拡大を目指す。」とされているところです。

しかし一方で、東日本大震災復興の中心となる港湾や道路といった公共インフラの分野については、PFI法が1999年に施行されて以来12年間様々な理由で、PFI事業として実施された事例が極めて少なく、今次PFI法の改正も震災復興にいかにPFIを活用していくかという観点から改正されたものではないことから、既に政策研究大学院大学等から震災復興にPFIを積極活用するためにPFI法を速やかに再改正する必要性が指摘されています。

英国、インド等の海外事例の検討・紹介を踏まえながら、今後わが国において、PFI/PPP事業を健全に定着させるに当たっての留意点を、今後ご紹介していきたいと思います。

(※)PFI(Private Finance Initiative):公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う手法
(※)PPP(Public Private Partnership):民間事業者の資金やノウハウを活用して社会資本を整備し、公共サービスの充実を進めていく手法

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