パーソナルファイナンスのすゝめ

2011年10月3日

近年、「パーソナルファイナンス」という考え方が広がりつつある。「コーポレートファイナンス」という言葉には馴染みがある方が多いと思うが、コーポレート(企業)をパーソナル(家計)に置き換えたものと思って頂ければよいだろう。大まかに言えば、家計における資産と負債のバランスのあり方、また収入に対する支出の管理のあり方等を、ライフプランに基づき考えることである。「パーソナルファイナンス」は日々のやりくりに留まらず、「家を買いたい」、「起業したい」、「子どもの教育にはお金をかけたい」など、ライフプランを考えた上で、それを達成するためにはどうすればいいか、財務面から考えるものである。

老後の生活設計を例に考えてみよう。公益財団法人生命保険文化センターの「生活保障に関する調査(平成22年度)」によれば、「老後を夫婦2人で暮らしていく上で最低限必要と考える生活費」が22万3,000円/月であるのに対し、「ゆとりある老後に必要と考える費用」は14万3,000円上乗せされた36万6,000円/月である。65歳まで働き、85歳まで生活すると仮定すると、必要額は前者が5,352万円、後者が8,784万円になる。貯蓄と退職後の収入(退職金や年金等)でまかなう必要があるが、足りないと予想される場合、働き続けるか、金融商品や不動産を運用するか、収入を増やす術を考えなければならない。老後の生活にどの程度ゆとりを持たせたいと考えるかは人により異なり、ゆえに貯蓄の必要額も人によって異なってくる。

「パーソナルファイナンス」では定期的な見直しも重要である。自身のライフステージも、自身を取り巻く経済環境も、日々変化するからである。ライフステージに関して言えば、20~50代はストック(資産形成)に重点を、収入が減少する60代以降はフロー(貯蓄と収入に見合った支出)に重点を置くべきであろう。経済環境について言えば、現在家計の金融資産のうち現預金は828兆円と全体の55%を占める(下図参照)。バブル崩壊後、デフレが続く日本においては、資産を現預金におくだけでも実質的な資産価値は増加した。しかし、今後逆に物価が上昇すれば現預金の実質的な価値は減少する。資産が現預金に偏っている場合、物価や金利の上昇に耐性のある金融資産を組み込むなどの備えが必要であろう。

どんなに素晴らしいライフプランがあっても、それを支える資産がなければ絵に描いた餅になってしまう。国の財政状況は厳しさを増し、これまでのような社会保障が今後も受けられるか不透明である。税金や保険料等の支出は増えていく可能性が高い。家計のあり方を長期的視点で考える「パーソナルファイナンス」は今後さらに重要度を増していく。現状、パーソナルファイナンスの考え方が日本に広く浸透しているとは言いがたく、さらなる金融・経済に関する教育が必要である。

家計金融資産の内訳

(注)2011年6月末現在
(出所)日本銀行「資金循環統計(2011年4~6月期速報)」より大和総研作成

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