海外投資家による日本株買いの中身が変わってきている可能性

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2011年03月08日

  • 土屋 貴裕
海外(外国人)投資家の日本株売買動向は、2010年11月第1週から、2011年2月第4週まで17週連続での買い越しが続いている。こうした日本株市場への海外からの資金フローと、6つのアジア株市場(韓国、台湾、タイ、インドネシア、ベトナム、フィリピン)への資金フローを比較したところ、アジア6ヵ国の株式市場に向けた資金フローは、2011年1月下旬から流出(売り越し)に転じた。

これまで、日本株とこれら合算したアジア株へのマネーフローの大きなトレンドは似た動きであったが、少なくとも目先的には売買の方向性が異なってきている。

また、株式時価総額は、2011年2月18日時点の韓国、台湾、タイ、インドネシア、ベトナム、フィリピンの6市場合計は2.8兆ドルで、日本株の4.2兆ドルにはるかに及ばない(Bloomberg)。各市場の時価総額対比で見た場合、日本株への資金フローが、これら6ヵ国への合算フロー額を上回ってきたのは、2011年1月半ば頃からである。それまでは同程度か日本株へのフローの規模の方が相対的に小さかった。日本株へ多く資金が流れてきたのは、1月半ばからであり、それまで同程度の資金フローであったことを鑑みれば、保有額でみた日本株はまだアンダー・ウェイトである可能性があろう。

こうした1月半ば頃からの海外投資家の日本株投資の増加は、海外投資家の日本株売買動向と「売買単価の差」からすると、中身が変わってきている可能性がある。

売買単価の差」とは、売り単価は売り金額を売り株数で除し、買い単価は買い金額を買い株数で除して1株あたりの金額を求め、それらの差として定義した。値嵩株などが含まれていれば振れることもあるため、目安に過ぎない点は留意しなければならない。

時系列を追ってみていくと、買い越しが増える局面では売買単価の差がマイナスに、売り越す局面ではプラスになる逆相関の関係があるが、「リーマン・ショック」等が問題となった2008年末あたりでは、順相関の関係にあり、投売り的な売りであった可能性が指摘できる。足もとでは、買い越し額が増える一方で売買単価の差がプラス方向に近づいてきており、日本株のウェイトを引き上げるため、やや割高であっても買い越し額を増やすようになってきたのではないだろうか。

マネーフローの転換点となったのは、2010年秋以降の各国中銀の対応であろう。日銀、FRBが緩和政策を進める一方で、新興国では利上げが相次いだ。1月半ばも新興国で金融引き締めが相次いだタイミングにあたり、引き締めの程度がどうなるかという懸念材料があるのに対し、デフレ下の日本では引き締めリスクがほとんどない、という違いが指摘できるだろう。

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