テレビは地デジ化移行後も売れ続ける

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2011年01月24日

2010年の個人消費は、経済対策の効果もあってテレビと自動車がけん引した年であった。ただし自動車は、すでに10年9月のエコカー補助金廃止に伴って販売台数が大きく落ち込んでいるため、今後はテレビの販売がどれだけ好調を維持できるかに注目が集まっている。特に、地上デジタル放送への完全移行(11年7月24日)後に需要が大きく落ち込むのでないかという懸念が非常に強い。もし今夏以降販売が大きく落ち込めば、企業収益といったミクロベースでの影響だけでなく、日本経済というマクロベースでの影響も大きい。

先行きを考える上で、まずテレビの普及動向に注目する必要がある。薄型テレビは依然として普及段階にあり、その普及率はブラウン管カラーテレビが普及した70年代前後とほぼ同じテンポで上昇している(図1)。さらに、テレビの保有台数は1世帯当たり2台強であることから(10年3月時点で1世帯当たり2.15台)、普及率が100%に達した後も購入が続く、いわゆる「買い換え・買い増し」型の製品と言える。そのため、現時点の普及率は100%近くとみられるが、その後もテレビの販売がすぐに落ち込む可能性は低い。

次に、世帯当たり保有台数と世帯数等から潜在需要を試算すると、11年3月時点の潜在需要は4,000万台程度とみられる(図2)。エコポイント制度もあって未曾有の販売台数を記録した10年4~11月のテレビ出荷台数は年率換算で約2,500万台であったが、そのペースで販売し続けたとしても、潜在需要を満たすために1年半程度かかる規模である。そのため、地デジ化される7月末までの4ヵ月間ですべての潜在需要を掘り起こすことはできないだろう。以上のことから、11年度以降は販売のペースはエコポイント制度のあった10年度よりも減速するとみられるものの、個人消費のけん引役として引き続き期待できると考えられる。

図1:種類別にみたテレビの普及率の推移
図2:テレビの総保有台数と潜在需要

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神田 慶司
執筆者紹介

経済調査部

シニアエコノミスト 神田 慶司