温室効果ガスの大幅減少が示唆する日本の方向性

2011年1月17日

  • 資本市場調査部 水口花子
09年度の日本の温室効果ガス排出量(速報値、2010年12月27日、環境省公表)は、京都議定書の基準年の値を初めて下回り、基準年比4.1%減、前年度比5.7%減となった。環境省によると、前年度から排出量が減少した理由は、1)景気後退に伴うエネルギー需要の減少、2)原子力発電所の設備利用率の上昇などに伴う効率(原単位)改善の2点である。エネルギー由来のCO2排出量では、前年度比では各部門が減少しており、寄与率の高い順に、エネルギー転換部門、産業部門、民生部門、運輸部門である(直接排出量)。

排出量削減の主な経路は、(1)原子力、風力などの低炭素エネルギーの利用増加などによるエネルギー構成の変化、(2)省エネ機器や燃費の良い自動車の普及によるエネルギー効率の改善、(3)エネルギー多消費型からサービス業などのエネルギーを相対的に必要としない生活・産業構造への転換の3つが挙げられる。前年度からの減少理由は上記の(1)、(3)にあたると考えられる。なかなか基準年を下回らなかった排出量の減少理由が(1)、(3)であったことは興味深い。つまり、減少理由とならなかった(2)エネルギー効率の改善が、従来の産業部門の削減余地がほとんどなく民間の努力がないと削減目標の達成は不可能と主張していたものの正体と推察できるからである。

この民間の努力とは、環境省の分類で家計関連とされる家庭部門と運輸部門のうちの自家用車の使用を指すと考えられる。家計関連はCO2排出量全体の約22%を占め、うち9%は電力の使用によるものである(09年度、非エネルギー由来含む)。対策としては、家電・自動車の省エネ「(2)」のほか、太陽光発電の利用「(1)」や共同生活によるエネルギーの有効利用などライフスタイルの転換「(3)」が考えられる。しかし、(1)太陽光発電設備の設置やガスの利用などのエネルギー源の変更は、マンションなどの居住形態では対策が制限される場合もあり、個々の努力では削減が難しいだろう。また、晩婚化や独居老人が増加する中、(3)共同生活の急速な増加も見込みづらい。つまり家計関連(≒民間の努力)の主な削減手段は(2)省エネと考えられるが、これは今回の削減の理由に挙がらなかったように、地道に継続される努力である。実際、家庭部門の排出量は2000年をピークに減少に転じてはいるが、削減スピードは速いとはいえない。

速報値で値が変わる可能性もあるとはいえ、09年度の大幅な排出量減少は日本の温暖化対策の1つの解を示唆している。家計関連の継続的な温暖化対策はもちろん重要であるが、主な削減手段が省エネ努力である家計関連より、CO2の約3割を排出する産業部門やクリーン電力を供給することでCO2の25%に影響を及ぼす発電事業者などがエネルギーのクリーン化を積極的に推進することが温室効果ガスの早期削減のためには必要である。これら示唆と機会を活かし、エネルギー消費と経済成長がリンクしない産業構造へと日本が転換できるか、新しい産業を育てられるかが課題であろう。

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