ゆうちょの集中満期動向

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2010年12月06日

  • 土屋 貴裕
定額貯金の集中満期を迎えたゆうちょ銀行の貯金残高の推移をみると、2010年4-6月期に、定期性貯金が約1兆円減少し、流動性貯金が約2兆円増加した。特に、流動性貯金のうち、利子が付かない当座預金に相当する振替貯金残高の急増が指摘できる。通常貯金等の預入金が預入限度額の1,000万円を超える場合には、自動的に振替口座に超えた金額を移し替えられる。振替口座は、3月末の7.6兆円から6月末の8.4兆円に7,652億円増加しており、1四半期で10%超もの増加は、満期資金が滞留している可能性を示唆するものだろう。

7-9月期は、流動性貯金が1.2兆円、定期性貯金が0.5兆円減少し、合わせて1.7兆円超の残高減となった。08年、09年の7-9月期と比較すれば、流動性貯金の減少幅は小さく、定期性貯金の減少幅は大きい。結果として、ゆうちょ銀行の貯金残高全体は、3月末の176.5兆円から7,373億円減少し、9月末は175.7兆円となった(未払い利子を含む)。減少してはいるものの、大規模な資金流出が生じている様子はうかがわれない。やはり、定額貯金の満期資金が流動性貯金にシフトし、滞留していると考えられよう。

さらに、マネーストック統計と、国内銀行の預金者別預金統計の構成項目の違いを利用して、月次データの作成を試みた。ただし、ゆうちょ銀行以外の貯金等が含まれる平残ベースでの試算であり、数値は目安となる。

ここで、4月に注目したい。2000年4月の定額貯金の預入額は4.8兆円で、利払いを含めると、10年後は最大4.9兆円余りになる。これに対し、2010年4月は、流動性貯金が1.4兆円増加し、定期性貯金が1.0兆円減少したと試算される。仮に試算された1.0兆円の残高減少が実際に満期を迎えた分だとすると、10年間残存した資金の比率は2割強となる。

ただし、ネットで1兆円の残高減少だとしても、再預入された資金が存在する可能性を考えれば、グロスの満期額はもう少し多いことが予想される。実際の残存率はもう少し高く、3割弱程度かもしれない。

これらを踏まえ、満期が最も集中する時期を考えてみよう。2000~01年度のなかで、特に預入が集中した2000年10月から01年2月にかけての預入額は24.4兆円であった 。これに利払い額を加えて、残存率が2割強から3割弱という上記の試算値を当てはめると、預入から10年後の、2010年10月から11年2月にかけての満期額は、5~6兆円程度が見込まれることになる。

1月には、約1兆円の個人向け国債(固定5年)の満期もあり、家計にとって資産選択の機会が訪れているとも言えるだろう。

ゆうちょ銀行貯金残高

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